欧州車情報69.com http://www.eurocars69.com 欧州車(ベンツ/AMG・BMW・アウディ・フォルクスワーゲン・ポルシェ・フェラーリ・ランボルギーニ)の自動車情報をお届け。 Fri, 18 May 2012 13:00:57 +0900 http://wordpress.org/?v=ME2.2.3 ja マツダ CX-5 XD:新車試乗記 http://www.eurocars69.com/archives/29985 http://www.eurocars69.com/archives/29985#comments Fri, 18 May 2012 22:00:57 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29985 キャラクター&開発コンセプト

初フルスカイアクティブ。注目は新開発のクリーンディーゼル

東京モーターショー2011に出展されたCX-5

「CX-5」はマツダの新型クロスオーバーSUV。マツダにとっては、アクセラ、アテンザ、デミオに次ぐ基幹車種であり、同時に世界戦略車。また同社が全力で取り組む次世代環境技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)技術」を初めて全面採用したモデルでもあり、さらに新デザインテーマ「魂動(こどう)」を採用したモデルの第1弾でもある。

もともとはコンセプトカー「勢(Minagi)」として2011年3月のジュネーブモーターショーでデビュー。「CX-5」と命名された量産モデルは同年9月のフランクフルトショーでデビューし、日本では同年11月の東京モーターショーで公開。2012年2月16日に発売された。

 

エンジンは「スカイアクティブ-G 2.0」こと2リッター直4・直噴ガソリンエンジンと「スカイアクティブ-D 2.2」こと2.2リッター直4・直噴ディーゼルターボの2種類だが、注目は何と言っても後者。14.0の低圧縮比によって従来エンジン比で約15~20%の燃費改善を行ったほか、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction=選択触媒還元)などのNOx(窒素酸化物)後処理装置に頼ることなく、日本のポスト新長期規制、欧州のユーロ6、北米のTier2Bin5といった最新環境基準をクリアした“新世代スーパークリーンディーゼルエンジン”であり、JC08モード燃費は最高18.6km/L(FF車)となっている。

グローバルで年間16万台以上。すでに20万台規模に増産へ

東京モーターショー2011に展示された「スカイアクティブ-D 2.2」のカットモデル

生産は輸出向けを含めて広島市の宇品工場。国内の月販目標は1000台(年間1万2000台)だが、発売後1ヶ月の累計受注台数はその8倍の約8000台、発売後約2ヶ月(4月末)では約1万6000台を達成。特にディーゼルは当初、全体の5割と想定していたが、実際には8割以上に達しており、これが販売実績を押し上げている。

さらに北米や欧州でも今春から発売され、海外からの受注も予想を大幅に上回る様子。グローバルでの目標台数は16万台以上だったが、すでに20万台規模の増産体制は必至。現在、円高などで苦境が伝えられるマツダだが、CX-5がV字回復に貢献する一台になるのは間違いない。

なお2006年にデビューした「CX」シリーズの第一弾、CX-7は2011年12月に国内販売を終了。ゆえにCX-5は現時点ではマツダにとって国内唯一のSUVだが、海外ではCX-7と海外専用車のCX-9が引き続き販売されている。

価格帯&グレード展開

ガソリンは205万円~、ディーゼルは258万円~

エンジンは2リッターガソリンと2.2リッターターボディーゼルの2種類で、変速機は共にトルコンの6速AT。i-stop(アイドリングストップ機能)、DSC、6エアバッグ、オートエアコン、サイドモニター&バックガイドモニター(ルームミラーに表示)は全車標準で、アドバンストキーも最も安い20Cを除いて全車標準。オーディオは全車オプションになる。

気になるガソリンとディーゼルの価格差は、装備内容が近い「20S」と「XD」で38万円。実際にはエコカー減税によって、ディーゼルは購入時の自動車取得税と自動車重量税がハイブリッド車並みに100%免税となるほか(ガソリンは75%減税)、保有義務期間などの条件付で最大18万円のクリーンディーゼル補助金を受けることも可能で(ガソリンは10万円のエコカー補助金のみ)、この差はもう少し詰まる。さらにモード燃費が1割以上良く、燃料費が1割以上安く、最大トルクがガソリンの2倍以上となれば、ディーゼルに傾くのもむべなるかな。

 

今回試乗した「XD」(FF)。19インチアルミ&タイヤ、ディスチャージヘッドライトなどはオプション

【ガソリン(SKYACTIV-G 2.0)】+6AT
・最高出力:114kW(155ps)/6000rpm
・最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4000rpm
・JC08モード燃費:16.0km/L(FF)/15.6km/L(4WD)
■20C      205万円(FF)
※225/65R17タイヤ&スチールホイール付
■20S      220万円(FF)/241万円(4WD)
※225/65R17タイヤ&アルミホイール、本革巻ステアリング、アドバンストキー付

【ディーゼル(SKYACTIV-D 2.2)】+6AT
・最高出力:129kW(175ps)/4500rpm
・最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2000rpm
・JC08モード燃費:18.6km/L(FF)/18.0km/L(4WD)
■XD       258万円(FF)/279万円(4WD)  ※今回の試乗車
※225/65R17タイヤ&アルミホイール、、本革巻ステアリング、アドバンストキー付
■XD L Package  298万円(FF)/319万円(4WD)
※225/55R19タイヤ&アルミホイール、ディスチャージヘッドランプ、運転席電動レザーシート、SCBS(スマート・シティ・ブレーキ・サポート)付

パッケージング&スタイル

マツダらしくダイナミックな造形

スタイリングはいかにも欧州で受けそうなクロスオーバーSUV風。マツダ的には新デザインテーマ「魂動」の第一弾であり、「生命力と躍動感を研ぎ澄ませた造形」、「獲物に飛びかかろうとするチーターを彷彿とさせる」と訴えるもの。ま、チーターには見えないにしても、獰猛な動物(例えばクマ?)のような印象は受ける。

 

ノーズ部分にボリューム感を持たせ、そこに5角形の大型グリルを配したフロントデザインは、これから「マツダの顔」として新型車に展開されるはず。CX-7のような端正なカッコ良さではなく、埋没しない個性を打ち出した感じだが、小手先の意匠ではなく、スタイリングでオリジナリティを出そうとしているのがマツダらしい。

欧州流にショート&ワイド

ホイールベースは2700mmで、クラス最長レベル。Cd値は0.33

ボディサイズも欧州車的にショート&ワイド。「コンパクト」と言っていいかどうか躊躇するところはあるが、グローバル基準で言えば「コンパクトクラスのクロスオーバーSUV」であり、国産車で言えば最近フルモデルチェンジしたホンダ CR-V、輸入車で言えばVW ティグアンが近く、このクラスのど真ん中に位置する。1840mmの全幅もクラス平均だが、1705mmの全高と共に、立体駐車場は難しそうだ。

 

   
全長(mm)
全幅(mm)
全高(mm)
WB(mm)
最小回転半径(m)

日産 デュアリス
4315
1780
1615
2630
5.3

アウディ Q3
4385
1830
1615
2605
5.7

VW ティグアン
4430~4460
1810~1865
1690~1710
2605
5.7

マツダ CX-5
4540
1840
1705
2700
5.5

ホンダ CR-V
4535
1820
1685
2620
5.5

トヨタ ヴァンガード
4570
1815~1855
1685~1690
2660
5.3~5.6

日産 エクストレイル
4635
1790
1700
2630
5.5

インテリア&ラゲッジスペース

メッキ加飾でアクセント。死角はカメラでカバー

インテリアデザインは、マツダらしくシンプルでスポーティ。インパネはソフトパッドでカバー。また夜にはドア内張りやインナードアハンドルのサテンクロームメッキ加飾(本物のアルミに見える)がギラリと光る。

 

ルームミラーはサイドモニター(写真)とバックガイドモニターを内蔵する

自動防眩機能付ルームミラーは、左サイドの死角と後方を映し出すサイドモニター/バックガイドモニター内蔵タイプ(純正ナビ付はナビ画面にバックガイドモニターを表示)。これが全車標準なのは、要するにフェンダーの補助ミラー(サイドアンダーミラー)の装着を免れるため。少々見にくく、サイドモニターを表示させるスイッチを押すのも面倒だが、思い切って全車標準としたところを高く買いたい。

 

パドルシフトはなく、マニュアル操作はシフトレバーのみ。マツダ流に手前に引くとシフトアップ

試乗車は「XD」だが、オプションでクルーズコントロール(追従機能なし)、SCBS、RVMを装備

写真の「XD」は手動ファブリックシート、「XD Lパッケージ」は電動レザーシートになる

 

【後席】居住性から安全装備まで不満なし

3人掛けも無理なく可能。サイドウインドウは全開する

後席空間に不足はなく、天地方向、横方向、前後方向と全てに余裕がある。シートの前後スライドやリクライニングとかは出来ないが、特に必要は感じられない。乗降性も良い。

衝突安全装備も充実しており、エアバッグは前席フロント、前席サイド、カーテンエアバッグの計6個を標準装備。ちなみに米国IIHS(道路安全保険協会)の衝突安全テストでは、最高評価の「トップセーフティピック2012」を獲得している。IIHSのテスト項目は、約64km/hでのオフセット前面衝突、約50km/hでの側面衝突、約32km/hでの後面衝突時の頚部(けいぶ)保護性能試験など。いずれもCX-5は4段階評価で最高の「GOOD」とのこと。

■外部リンク
IIHS>評価>2013 マツダ CX-5(英語)
YouTube>2013 マツダ CX-5 フロントオフセットクラッシュテスト(IIHS)

【荷室】容量も工夫も盛りだくさん

背もたれは流行りの3分割。中央だけ倒すということも可能

トランク容量は通常時で500リッター。数値的にはアテンザより少し少ないが、天地には余裕がある。またトノカバーはリアゲートを開けると連動して上に上がる「カラクリトノカバー」(20Cを除く)。類似のものはマツダだけでなく他社モデルにもあるが、なかなか便利。

 

「カラクリトノカバー」に注目。ロールから引き出された部分が透けている

後席空間が広いので、拡大時の容量は1620リッターと巨大。40:20:40分割式の背もたれは、荷室側のリモコンレバーを引くと座面の沈み込みと共に倒れ、ほぼフラットに収納される(カラクリフォールド)。背もたれが3分割なので、レバーも計3つ(左側に2つ、右側に1つ)付いている。

 

全車スペアタイヤレスで、床下には発泡スチロール製の小物収納スペースとパンク修理キットのみ

 

基本性能&ドライブフィール

少しカラカラいうが、それを除けばガソリン車みたい

スカイアクティブDこと、2.2リッター直噴ターボディーゼル。最高出力は129kW(175ps)/4500rpm、最大トルクは420Nm (42.8kgm)/2000rpm

試乗したのはクリーンディーゼル「XD」のFF。標準グレードだが、試乗車のようなフルオプション仕様だと、手動ファブリックシートを除いて、実質的には上級グレードの「XD Lパッケージ」と同じになる。

まずはステアリング左奥のボタンでエンジンを始動。一般的なディーゼルでは2圧縮目で始動するところを、スカイアクティブ-Dは1圧縮目で着火・始動するとのことで、確かにククッといった瞬間に火が入る。注目のアイドリング音は……若干「カラカラカラ」という音は確かに聞こえるが、濁点入りの「ガラガラガラ」では全くなく、ディーゼル的な振動もまったくない。

 

エンジンカバーを取るとこの通り。メカメカした外観が機械オタクを魅了する。透明カバーにして欲しい

アクセルを踏み込めば、思ったよりも普通にスルリと滑らかに走りだす。トルコンATのせいも大きいと思うが、ある意味ガソリンの直噴ターボ車みたい。6ATはすぐに2速、3速とシフトアップして、回転が高まるスキを与えず、ゆえにエンジン音が高まることも全くない。4リッターV8ガソリン車並みの最大トルク、420Nm (42.8kgm)はわずか2000rpmで発揮されるが、街中での常用回転域は1500回転前後。おおむね1200~1800回転の範囲内で、コロコロと走り続ける。オーディオを消して耳をすませば、加速時にカラカラという音がかすかに聞こえるなど、ディーゼルっぽさが皆無と言えば嘘になるが、音・振関係がかなりガソリン車っぽいのも確か。同時に、2000回転以下で大人しく走る限り、超トルクフル、というほどでもなく、この点もちょっとガソリン車っぽい。

2000回転以上でパワーディーゼルに豹変

これは街中で流している時。加速時以外、エンジン回転は1500回転前後がキープされる

とはいえアクセルを躊躇なく踏み込み、エンジン回転が2000回転を超えると、その瞬間にターボディーゼルらしいトルクの塊が盛り上がり、FFで1510~1530kgという車重がフワッと軽くなったように加速する。これぞ420Nmの威力。そして大小2個のターボチャージャーを備える2ステージ・ターボの威力か。

加速する割に、エンジン回転数が高まらないのがディーゼル的だが、回転上昇が鈍い感じはなく、エンジンが唸ることもない。1速、2速でアクセルを全開にすれば、最高出力175psを発揮する4500rpmオーバーまでシュゥンと一気に吹け上がる。特にマニュアルモードでは自動シフトアップしないので、5200回転からのレッドゾーンに軽く飛び込もうとするほど。昔のディーゼルと違って、エンジンが唸ったり、振動が出たりすることは全くない。

ちなみに圧縮比はディーゼルエンジンとしては常識外れに低い14.0で、これは狙ったのか、たまたまなのか、デミオの13-スカイアクティブとまったく同じ。一般的なディーゼルは16~18くらいで、エクストレイルの20GTでも15.6だ。

変速機はガソリン車も含めて全車、新開発の6速AT。「7速、8速、アタリマエ~」な今、6速というスペックに特別なインパクトはないが、これもロックアップ領域の拡大などを図った「SKYACTIV-DRIVE」と称する新世代AT。街乗りでは3速と4速のステップ比がやや大きく、ともすると3速で2000回転近くまで引っ張るのが少し気になったが、だからといってどうというわけではない。

ディーゼルでも優秀なi-stop

もちろん信号などで止まれば、i-stopことアイドリング・ストップ機能が作動。基本的には停車すれば、ほぼ確実にエンジンを止めてくれる。再始動時間は、ディーゼルエンジンで世界最速の0.4秒とのこと。おかげでブレーキを離せばククッとスターターが回る間もなく火が入る。ヒルホルダーのおかげもあって坂道発進でも下がることはない。

細かいことを言えば、ガソリン車のi-stopに比べると、始動時の振動とノイズは大きめで、アイドリングストップ自体に慣れていない人には違和感があるかも。しかし他社の一部アイドリングストップ機能と比較すれば、むしろディーゼル用のi-stopの方がよく出来ている、というレベル。いちおうセミラック製グロープラグも装備しているようだが、基本的には自然着火のディーゼルエンジンとして考えれば、始動性の良さは驚異的。もちろんイヤならi-stopをオフにすることも出来るし、ブレーキを軽く踏むことで作動せないことも出来るが、そうするより慣れてしまう方が早い。

低速用の自動ブレーキ「SCBS」を採用

SCBS用のレーザーセンサーはフロントウインドウ上部に配置

CX-5には、約4~30km/hで走行中、前方の障害物をレーザーセンサーで監視し、自動ブレーキで衝突被害の軽減を図る「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」が採用されている(XDにオプション、XD Lパッケージに標準装備)。

機能としてはボルボのシティセーフティと似たもので、あくまでも低速での追突回避・被害軽減やAT誤操作発進抑制を狙ったもの。安全運転する限りは作動せず、付いているのか付いていないのかよく分からないくらいのものだが、壁が迫っているところでアクセルを踏むと「BRAKE」と警告表示されたので、「ああ、付いてるな」と実感。まあ、こういうものは普段は忘れているくらいがちょうどいいかも。

また、SCBSやクルーズコントロールとセットで付いてくるのが、「リア・ビークル・モニタリングシステム(RVM)」。これも機能としてはボルボやドイツ車など他社ですでに見られるもので、走行中に斜め後方の死角を監視し、車両が接近してくると車線変更時などにドライバーに音と光で警告するもの。ボルボのBLISはCCDカメラ(画像認識)を使うが、マツダがアテンザから採用しているものは24GHzレーダーを使う。

このSCBS、RVM、クルーズコントロール(追従機能はない)はセットで何と7万8750円と不思議なくらい格安。営業マンならずとも、装着をおすすめしたくなる。

CX-5 ディーゼルの本領は高速道路で

CX-5の良さが最も発揮される場所、それはもう間違いなく高速道路。100km/h巡航は6速トップで約1800回転。すごいのはそこからアクセルを踏み込むと、キックダウンなしでグングン加速してゆくこと。エンジン回転が上がらないのに速度は伸びる、という感覚は、ガソリン車に慣れた身にはかなり新鮮。100km/hを超えた後は、130km/hだろうが、150km/hだろうが、体感スピードは変わらない。仮に150km/h出しても約2700回転で平穏に巡航できるし、この時の疾走感は素晴らしいの一言。日本では堂々と味わえないのが、あまりに残念。

ただ、馬力自体は175psに過ぎず、ディーゼル特有の、絶頂感のない加速感のせいか、ガソリン車のようなパワー感はない。また加速自体も160km/hあたりから頭打ち感(あくまで感覚的な)が出る。ちなみに日本仕様は180km/h+αで速度リミッターが働くはずだが、UK仕様(2.2ディーゼル・175ps版の4WD・6AT)の最高速は127mph(204km/h)とある。

なお、こうしたハイスピード域では試乗車がFFだったこともあり、ややリアのスタイビリティが心もとなくなってくる。目線の高さやFFであるという先入観もあるが、よく出来たフルタイム4WD車のような絶対的な盤石感はない。と言っても、日本では一般的ではない速度域の話だが。

もちろん高速域での快適性も文句なし。Aピラーやドアミラー付近で風切り音がザワザワと高まるが、これはエンジン音やロードノイズといった他の音源が際立って静かだから。特にロードノイズは、欧州製SUVに負けないくらい静かだと思った。Cd値は0.33で、SUVとしてはかなり優秀。

■外部リンク
マツダ モーター UK>CX-5>スペック(英語) http://www.mazda.co.uk/showroom/cx-5/specs/

FFの場合、ワインディングは腹八分目で

19インチタイヤ(XDはオプション、XD Lパッケージは標準装備)は、トーヨーのProxes R36。完全なるサマータイヤ

今どき、FFベースのクロスオーバーSUVでハンドリングが良くないクルマなど皆無だが、CX-5はさすがマツダ車だけあって、動きは軽快。ステアリングを切り込めば、ノーズがスッとインに向き、対角線方向に軽くロールしながらボディ全体でヒラリと曲がってゆく。試乗車は19インチ仕様だったせいか、操舵に対する反応やグリップにも不満はない。7~8割くらいで走る分においては、アンダーステア感もほとんどなく、ブレーキもよく効く。アクセラみたい、とは言わないが、ハンドリングはスポーティ。

とはいえ試乗車はFFだったせいか、コーナー旋回中にステアリングを素早く切り増す、みたいなことをすると、ボディ上屋がそれについて行けない感じが出る。アンダーステアが出る間もなく、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)のブレーキ制御がトトトッと断続的に介入して軌跡が膨らむのを防ぐが、やはり絶対的なフロントヘビー感は否めないところ。前後重量配分は車検証で、950kg+580kg(62:38)と、FF車としては一般的なレベルなので、原因がエンジン重量なのか、エンジン重心位置なのか、あるいは単純にアクセルオフに対するエンジンブレーキの効きの弱さ(常用回転域が低いせいもありエンブレが弱い)なのか、ちょっと分からないが。いずれにしても、最大トルクが420Nmもあるので、電子デバイスなしでFF車の設定はありえなかったはず。

試乗燃費は11.0~16.6km/L。JC08モードはFFで18.6km/L、4WDで18.0km/L

「i-DM(インテリジェント・ドライブ・マスター」に褒められた時の図(16.3km/Lを出した直後)。ステアリング操作が急だと「滑らかなハンドル操作を心がけましょう」と出る

今回はトータルで約250kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように様々なパターンで一般道と高速道路を走った区間(約90km)が11.0km/L。一般道でエコドライブに徹した走った区間(約30kmを2回計測)が16.3km/Lと16.6km/Lだった。

ちなみにJC08モード燃費は、FFで18.6km/L、4WDで18.0km/L。実用燃費は2000回転以下か、2000回転以上回すかで大きく異なるが、高速道路を法定速度で淡々と流せば、JC08モード燃費も十分に狙えそう。

 

2012年5月17日、愛知県の某ガソリンスタンドにて

ちなみに2012年5月現在、ガソリンの全国平均価格はリッターあたりハイオクが約155円、レギュラーが約145円。軽油は約125円なので(今回入れたところも125円)、ハイオクよりは30円(約19%)安く、レギュラーより20円(約14%)安くなる。

なお、国内で唯一のライバル車、エクストレイル 20GT(4WDのみ)のJC08モード燃費は、6ATが13.8km/Lで、6MTが14.2km/L。燃料タンク容量はCX-5が56リッター(FF)~58リッター(4WD)。エクストレイルが65リッターだ。

ここがイイ

トルクフルな走り、取り回しの良さ、先進安全装備

何と言ってもディーゼルの走り。燃費に加えて、やはりこの強力なトルクは魅力。「やはりクルマはパワーよりもトルク」と認識させられる。また、エンジンを上まで回さなくても加速するという、ディーゼル特有の乗り味は、ガソリン車とは異質だが、それゆえにガソリン車に慣れ親しんできた人間には新鮮。一昔、ふた昔前のディーゼルにあった、ガラガラ音、振動、吹け上がりの重さ、黒煙、匂いといったものはもはや皆無で、まさに内燃機関の進化というものが感じられるが、はっきり言ってそんな昔と比べることなど必要ないくらい最新エンジンとして素晴らしい出来。

乗ってみると意外にコンパクトで、狭いところでも困らないこと。最小回転半径は5.5メートルとまずまず小さく、実際のところ小回りもよく効く。あるいはよく効く感じがする。左フェンダーにつける例の補助ミラーを廃するため、ルームミラー一体型のモニターが全車標準になっているのも、評価したいところ。視認性が悪く、いまいち役に立たない感じはするが。

 

ブレーキ自動制御で衝突被害の軽減を図る「SCBS(スマート・シティ・ブレーキ・サポート)」&AT誤発進抑制制御、24GHzレーダーを使ったリア・ビークル・モニタリング・システム(RVM)、クルーズコントロールといった安全装備をセットにした「セーフティクルーズパッケージ」の設定(20SとXDに7万8750円のセットオプション、XD Lパッケージに標準装備)。スカイアクティブ技術の影に隠れて目立たないトピックだが、普通に考えれば「安全」は、燃費や経済性などより、はるかに重要な問題。ディーゼルの投入だけでなく、さりげなくこうした装備を採用してきたことは評価できる。特に20SやXDにも、格安の7万8750円で設定したのは英断。マツダの心意気に応えるためにも注文すべき。

ハロゲンでも十分に明るいと思うが、AFS機能付のディスチャージヘッドランプ(20SとXDに8万円のセットオプション、XD Lパッケージに標準装備)は、速度やステアリングの舵角に応じて光軸をよく変えてくれるし、もちろん明るい。オートライトとオートワイパーもセットで付いてくるので、迷うくらいなら装着をおすすめしたい。

ここがダメ

あえて言えば標準グレードのシート。美味しい速度域の高さ

好みや体型にもよるかもしれないが、シート。大柄で、全体にクッションが柔らかいタイプであり、特に腰まわり、いわゆるランバーサポート部のクッションが柔らかい。これがちょっと昔のアメ車というか日本車みたいで、何とも体が落ち着かず、モジモジした感じになりやすかった。試乗したXDの場合は手動式シートで、座面の角度やランバー調整が出来なかったせいかもしれない。XD Lパッケージでは、座面角度やランバーサポートも調整できる電動10ウェイのレザーシートが標準装備になるので、気になる方はそちらもチェックを。

試乗インプレッションでも表現に困ったが、このディーゼルターボで一番気持ちのいい速度域が、本音で言えば130~150km/hという速度域であること。とにかく100km/hから上はスピード感や快適性にほとんど差がないので、スピード超過には要注意。知らないうちに速度が上がってしまうのを防ぐためにも、クルーズコントロールは必須かも。

 

オーディオやナビは実質的に全て販売店オプションで、試乗車にはパイオニアのフルセグ付メモリーナビ(20万7900円)が装着されていたが、純正装着でメリットがあるとすれば、ステアリングスイッチが使えることくらいか。ある意味、純正ナビの存在意義が急速に薄れつつある今、ナビなどの操作インターフェイスに何の取り組みもないのは戦略として正しいのかもしれないが、物足りなさは残る。5年前に乗ったCX-7にはトヨタと提携した通信型ナビが用意されていたのだが。操作系と言えば、シフトレバーなども旧態然としていて、何か新しさが欲しいところ。

後席背もたれを畳んだ時に、カチッとロックしそうで、ロックしないのがちょっと惜しい(実用上、何の問題もないが)。あと、リアゲートを閉める時、ドアハンドル(単なる凹み)に手を掛けにくいのはけっこう気になった。CX-7ではリモコンキーがクレジットカードサイズだったが、それは完全に消え失せた。しかし選択肢として残しておいて欲しかったと思う。

総合評価

燃料代はCX-7の1/3程度

乗ってすぐに分かるのは世界を相手に戦う極東の小メーカー、マツダ渾身の一台であること。トルクグイグイという走りの出来の良さに関しては、誰もがまず褒めずにはいられないはずだ。ただそこでふと、CX-5の記事を書く前に、モーターデイズのCX-7の記事(2007年)を読みなおしてみた。で、あれっと思ったのは、車両の話ではなく、サラリーマンの年収に関しての記述。CX-7の原稿は5年前だが、そこからさらに5年ほど前、つまり今から約10年前、2002年頃の国税庁の統計では、男性サラリーマンの平均年収は、20~24才が280万円、25から29才が388万円、30から34才が483万円だったという。ずいぶん多いのじゃないかと思い調べてみたら、直近のデータは見つからなかったが、2年前(平成22年)のものがあり、それぞれ269万円、366万円、432万円に下がっていた。それでも結構高めの水準に思える人も多いはず。これは地域によって、かなり差があるからだろう。給与水準の高い東京では、新卒でも280万程度の年収が普通のようだ。とはいえ10年前より確実に下がってきている。日本の若い人はどんどん貧乏になっているのだ。人が減り、給与が下がる。クルマが売れないわけだ。

 

で、CX-5の話に戻るが、まず評価すべきは、その手頃な価格だろう。ガソリンなら205万円から、ディーゼルだと258万円からという価格は、基本的に高価な印象のあるSUVにとって、かなり手頃に感じられる。ちなみにほぼ同サイズのアウディ Q3は2リッターターボのクワトロ(フルタイム4WD)になるが、409万円もする。昨今はさらに減税(もちろん値引きも)が加わるから、支払い価格はもっと安くなる。

とはいえエコカー補助金の予定枠がいついっぱいになるのか、5月18日の時点でははっきりしていない。補助金は麻薬のようなもの。とはいえ無くなると実際に売れ行きに響くのが困ったところだ。いずれにしても、これだけ立派なサイズのSUVがこのくらいの価格で買えるなら、24歳までの人ではちょっと無理としても、それ以上の人には現実的に考えられる価格だろう。一部の都市生活者以外、給与が下がろうと、クルマは必要なものなのだから。

安いといえば燃料代もだ。燃費はCX-7に比べて笑えるほど良くなっている。CX-7(4WD)の2.3リッターターボがプレミアムガソリン仕様で10・15モード:8.9km/L、我々の試乗では5.5km/Lしか走らなかったことを思うと、試乗したCX-5 ディーゼルでは、燃料代が1/3程度で済んでしまう。そのうえCX-7で不足気味と書いたトルクは、有り余るほどあるわけで、国内では実質的に後継車となるCX-5が段違いに進化しているのがわかるだろう。昔オフロード四駆ブームの頃は、ディーゼルだからあれだけ大きなクルマでも維持できたもの。CX-5も感覚的には一昔前の軽自動車以上の燃費だから、燃料コストはかなり安いといってもいいはずだ。

長い期間、たくさん距離を走ってこそ価値がある

さて肝心のディーゼルエンジンの話だが、最近はよく分からなくなってきた。何が分からないか。まずディーゼルに乗ってCO2を削減すべきか、だ。CO2削減のためにはガソリン車よりディーゼル車がいいというのは確かなのだが、そもそもCO2はそんなに問題なのか。震災以降、さまざまな常識を疑わざるを得なくなってしまったが、CO2問題も今となっては一種のプロパガンダとも思えてしまう。欧州でディーゼルが売れているのは、環境性能というより、大トルクによる走りの性能とか、航続距離の長さとか、何より経済性のためという話もある。今でこそ、CX-5のようなクリーンディーゼルが登場してきているが、欧州のディーゼルがすべてクリーンだったとは言いづらいのだし。

メルセデスのEクラスディーゼル(E350 ブルーテック)では、振動にしろ音にしろ気にならなくなっているものの、日本においてわざわざ高級車をディーゼルで乗る必要はないのではと書いた。とはいえCX-5なら、経済性だけでもディーゼルが選択肢となるだろう。まして音も振動もすっかり気にならなくなっていて、さらに圧倒的なトルクが得られるのだから。こういう大トルク車に乗ると、クルマの良さはやはりトルク感にあるなと思う。気持ちいい走りは、トルクがもたらすものだと実感するはずだ。

さらにCX-5の場合、ディーゼルの音や振動をキャビンに通さないよう、入念な遮音・制振対策がなされていて、さらに快適性が高まっているのもいい。雨の高速クルージングも本当に静か。本文にあるようにアイドリングストップにさえ慣れれば、他に何も不満がないクルマとなる。つまりCX-5のディーゼルは、当然のことながら環境よりディーゼルのもたらす経済性の高さ、トルクフルな走りにその本質があるように思う。給与が下がり続ける昨今、それらは素晴らしいことだ。

 

と褒めておいてなんだが、昔のディーゼルエンジンを知る身としては、10年10万km、あるいはそれ以上の距離を走った場合、振動はどうなのか、日本のように低速走行ばかりした場合、DPFは大丈夫か、などと一抹の不安が心をよぎる。日本では今後、長期保有する人が増えると思うし、ディーゼル車は長い期間、たくさん距離を走ってこそ価値があるもの。欧州の人たちのようにクルマをメンテナンスしながら乗り続ける文化があればいいのだが、日本人だと乗りっぱなしで不満ばかり言いそう。10年後に「心配は杞憂にすぎなかった」とレポートしたいものだ。

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世界初!スバルBRZが公式競技で優勝を飾りました【全日本ジムカーナ】 http://www.eurocars69.com/archives/29984 http://www.eurocars69.com/archives/29984#comments Wed, 02 May 2012 11:22:43 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29984 4月22日に全日本ジムカーナ選手権第2戦が広島県のTSタカタサーキットで開催され…

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アウディ A6 アバント 2.8 FSI クワトロ:新車試乗記 http://www.eurocars69.com/archives/29983 http://www.eurocars69.com/archives/29983#comments Fri, 27 Apr 2012 21:36:54 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29983 キャラクター&開発コンセプト

「100」から数えて7代目。半年遅れでアバントも登場

東京モーターショーでジャパンプレミアを飾ったA6 アバント

アウディの「A6」は1994年に登場したアッパーミディアムクラスモデル。2011年8月に日本で発売された現行モデルは4代目で、また前身のアウディ「100」から数えると7代目にあたる。

今回試乗したのはセダンに半年ほど遅れて、2012年2月に追加されたステーションワゴンの「A6 アバント」。アウディでステーションワゴンを意味するアバントは、2代目アウディ100から続く伝統のモデル。ワゴンではなくアバントと称したのは、リアウインドウが寝た5ドア的なモデルとして始まったからだろう。

プラットフォームは先に登場したA7 スポーツバックがベース。ホイールベースは先代より65mm伸び、オーバーハングを短縮。ヘッドライトまわりもLEDを多用した新世代デザインとなり、スポーティなイメージを強めている。また、ボディ全体の20%以上にアルミ素材を使用し、軽量化に務めたのも売りの一つ。また2種類のV6直噴エンジン、7速DCT「Sトロニック」、アイドリングストップ機能「スタートストップ システム」などの採用によって、環境性能も大幅に向上。全車にフルタイム4WDシステム「クワトロ」を採用しながら、JC08モード燃費11.0~11.8km/Lを達成している。

またフリック操作や文字などの手書き入力ができるタッチパッド「MMI タッチ」を全車標準とするなど、インターフェイスも最新世代に刷新。直接のライバルはEクラス、そして5シリーズだ。

価格帯&グレード展開

アバントの「2.8 FSI」がお買い得!?

フルLEDヘッドライトはオプション

ラインナップはシンプルで、計4モデル。セダンとアバントそれぞれに、2.8リッターV6・直噴NA(最高出力204ps、最大トルク28.6kgm)の「2.8 FSI クワトロ」と3リッターV6・直噴スーパーチャージャー(310ps、44.9kgm)の「3.0 TFSI クワトロ」を設定。変速機は両者ともに7速Sトロニック、いわゆるDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)になる。

セダンとアバントの価格差はわずか30万円だが、一方で「2.8 FSI クワトロ」と「3.0 TFSI クワトロ」の差は225万円もある。これは後者がアダプティブクルーズコントロール等を含む「プレセンスパッケージ」(2.8 FSI クワトロでは50万円のオプション)等を標準装備するから。とはいえ、アバント 2.8 FSI クワトロのお買い得感が目立つのは確かだ。

先進安全装備については、レーダーセンサーを使った「アダプティブクルーズコントロール」や衝突回避を行う「プレセンスプラス」を、「3.0 TFSI クワトロ」に標準装備、「2.8 FSI クワトロ」にオプション設定。オーディオはBOSE(14スピーカー・600w)が標準で、オプションでバング&オルフセン(15スピーカー・1200w)を84万円で用意する。特徴的なフルLEDヘッドライトは30万円。

 

今回試乗した A6 アバント 2.8 FSI クワトロ

【セダン】
■A6 2.8 FSI クワトロ     610万円
■A6 3.0 TFSI クワトロ     835万円

【アバント】
■A6 アバント 2.8 FSI クワトロ   640万円  ※今回の試乗車
■A6 アバント 3.0 TFSI クワトロ   865万円

パッケージング&スタイル

より精悍に。スタイルも引き締まる

ボディサイズはセダンとアバントでほぼ同じ。正確に言えばアバントは10mm長く、30mm背が高くて、全長4940mm×全幅1875mm×全高1495mm、ホイールベース2910mm。ミディアムクラスとは言うものの、全長はラージクラス並みで、実車を見ても伸びやかなシルエットが印象的。とはいえ、やっぱりそこはミディアム。A8とは違う、控えめで実用的な雰囲気がそこはかとなく漂う。

 

ボンネット、フロントフェンダー、前後ドアはアルミ製。テールゲートもアルミが使われる

また先代のプロポーションはやや厚みのあるコンサバなものだったが、新型はA4などと同様にフロントアクスル(前輪車軸)を前方に移動して、ホイールベースを65mm伸ばし、逆にオーバーハングは短縮。結果、FRモデルのようなスポーティな印象も強めている。A1、A8、マイナーチェンジしたA4などと足並みを揃えたフロントデザインも精悍。誰が見ても一目で「アウディ」と分かる。

 

インテリア&ラゲッジスペース

デザイン・装備をアップデート

日本の「包丁」をモチーフにしたというインパネデザインが新しい

新しいモチーフを採り入れながら、アウディらしさをしっかり引き継いだインテリア。A7やA8など最新のモチーフも採り入れる一方、操作系やウッドパネルの使い方などは少々コンサバという気もするが、カンパニーカーとしての需要も大きいA6には、これで正解なのだろう。

またインパネで最も目を引くのがHDDナビ用の電動格納式8インチディスプレイ。画面にはMMIで各種車両情報や車両設定を呼び出すこともできる。操作性は悪くないが、「MMI タッチ」についてはまた後で触れる。

 

シフトレバー周辺にはMMI コントローラー、MMI タッチ、エンジン始動スイッチなど操作系が集中する

ただ、他車から乗り換えると、エンジン始動スイッチを探してしまうのがご愛嬌。シフトレバーの周辺をMMIのコントローラーやMMI タッチに占領されてしまったことで、エンジン始動ボタンはシフトレバーの左側に追いやられている。少し手を伸ばすような感じで、少々やりにくい。

 

8インチディスプレイのHDDナビゲーションシステムは標準装備

「MMI タッチ」は普段はラジオの選曲として機能。ナビ使用時には地図のスクロールもできる

試乗車のシートは標準仕様。オプションで電動18ウェイ&ミラノレザー仕様も用意

 

後席もそつなく。居住性はライバル車を上回る

後席シートヒーターは「2.8 FSI」ではオプション。アバントでは電動パノラマサンルーフ(25万円)もオプションで選べる

FFベースでホイールベースが2910mmもあるわけだから、後席スペースはもちろん問題なし。センタートンネルは出っ張るが、3人掛けはとりあえず可能。着座位置が高めのおかげで、閉塞感も少ない。またアバントの場合は、セダンよりドア上部も広く開くので、乗り降りも楽になる。居住性についてはFRで着座位置が低めのライバル車を一歩リード、といったところか。

荷室容量は560~1680リッター。「バーチャルペダル」もオプションで用意

リアゲートを開けると、トノカバーが上に持ち上がる。単純ながら便利

セダンのトランク容量は530リッターだが(さらに後席背もたれを畳んでトランクスルーも可)、アバントでは通常時565リッター、後席の背もたれを畳んで最大1680リッター。また、テールゲートを開けると、一緒にトノカバーが上にずれる仕組みやトランク床面にフック等が取り付けられるレールの設置など、工夫もいろいろ。

 

後席背もたれは60:40のシングルフォールディングで倒れる

オプションの電動テールゲート(15万円)には、キーを持ってリアバンパー下に足をかざすとテールゲートが自動的に開く「バーチャルペダル」というシステムが付いてくる。先回試乗した新型BMW 3シリーズにも装備されていたように、今や欧州車では珍しくない装備らしい。ただ、噂によるとA6 アバントのものは操作に少々コツが要るらしい。実は試乗車もオプション装着車だったのだが、試すのをうっかり忘れてしまった。

 

オートマチックテールゲート(バーチャルペダル付)は15万円のオプション

床下には浅い収納スペースがある

トランクの底部にはパンク修理キットとBOSEのオーディオシステムを搭載

 

基本性能&ドライブフィール

「2.8 FSI」は徹底的に、滑らか穏やか

試乗したのは過給器なしの2.8リッターV6直噴エンジンを搭載する「2.8 FSI」。ボディ自体はA8のようなオールアルミ製ではなく、スチールモノコックだが、「Audi ultra(アウディ ウルトラ)」なる軽量化技術によって、先代アバント比で20kg軽量化。ボンネット、フロントフェンダー、ドア4枚、前後バンパーストラクチャーなどがアルミ製になる。もちろんエンジンやサスペンションの一部もアルミ製。

とはいえ車重は1830kgとそこそこあり(セダンの40kg増し)、それに対して2.8 FSIの最高出力は150kW(204ps)、最大トルクは280Nm(28.6kgm)となる。馬力では約1.5倍の228kW(310ps)、トルクも約1.5倍の440Nm(44.9kgm)を誇る3.0 TFSI のような怒涛の加速は望めない。

 

100km/h巡航時のエンジン回転数は約1800回転ほど

とはいえ、とろけるように滑らかな回転フィーリング、パワーの出し入れが容易な穏やかな出力特性は、いかにも高級車、いかにも上品。また過給器付きエンジンと組み合わせると迫力のある7速Sトロニックも、こうしたNAエンジンとセットになると途端に滑らかに感じられるのは、ポルシェの911やパナメーラなどでも体感できるところ。予備知識がなければ、トルコンATと間違えてもおかしくないくらいスムーズに変速してゆく。

またある意味、オーソドクスなメカ式(クラウンギヤ式)センターデフの最新世代クワトロも、そんな穏やかさの要因。前後トルク配分は通常時40:60で、そこから(ある意味、なりゆきで)変化するが、要するに電子制御が介在しないから伝達感がナチュラル。もともと2.8 FSIにはタイヤを打ち負かすほどのパワーはないが、そんな「シャシー勝っている感」をクワトロがダメ押ししている。

 

さらに、エアサス要らずのスムーズな乗り心地(試乗車のタイヤは標準の18インチ仕様だった)、まったく不満のない静粛性、電動ながら適度な重みがあるステアリング(MMIでセッティング変更も可能)などなどは、いかにもミディアムクラスセダンらしい上質な世界。尖った部分、軽々しさ、メカメカしたところはなく、絹ごし豆腐のような印象に終始する。言ってみれば宮沢賢治の詩のように「いつも静かに笑っている」感じ。

回せば速い。「アウディドライブセレクト」も活躍

アウディドライブセレクトはMMIを使って設定する。走行モードは「コンフォート」「オート」「ダイナミック」の3つ(3.0 TFSIは「エフィシェンシー」を加えた4つ)で、さらにステアリング、エンジン、変速機などを個別に設定できる「インディビジュアル(個別)」もある

そんなわけで、大排気量V8や過給器付エンジンと比べれば、線の細さは確かにあるが、アウディ ドライブ セレクトで「ダイナミック」を選び、必要とあればマニュアルモードで上まで回せば、V8のような澄んだサウンドと共に速やかに加速するなど、決して遅いクルマではない。何かとお上の規則が厳しい日本で乗るなら、これくらいがちょうどいいかも。

ちなみに、新型A6で始まったものではないが、シフトレバーはD(ドライブ)とS(スポーツ)の切り替え方法が変わった新タイプ。以前のVWアウディ車は、Dの下(手前側)にあるSから、マニュアルモードにする際は、一回Dに戻してから左に倒す必要があったが、新タイプはSを選んでもレバーの位置はDのままなので、すぐに左のマニュアルモードに倒すことができる。今までずっと不便だなぁ、と思っていたのだが、その思いはVWも同じだったということか。まぁ、パドルシフト(3.0 TFSIは標準装備)があれば、それでマニュアルモードにすればいいので、それほど恩恵はないかもしれないが、2.8 TFSIにはパドルシフトが装備されない。

積極的にアイドリングストップ。発進時に少しショックがある

アイドリングストップ機能「スタートストップ システム」は全車標準。A6の場合は水温が上がらない状態からでも積極的にエンジンを止めてくる。もともとエンジンは静かなので、止まっても気づかないことが多い。

肝心の再始動は、ブレーキを緩めれば即座に始動するし、ノイズも小さく、クランキングも短い。BMWの新型1シリーズや3シリーズにあるようなショックはなく、同じアウディのA1よりも静かだし、ポルシェの911(991型)やパナメーラのように始動時の「雄叫び」もない。唯一惜しいのが、変速機がDCTだからか、電子制御クラッチがミートする際に、小さなショックがあること。ゆっくり発進すれば問題ないが、急いで発進する時は出やすい。慣れてくると、ほとんど気にならなくなるが。

試乗燃費は7.7~9.7km/L。JC08モードは11.8km/L

30km走って9.7km/Lだった時のもの(撮影中に少し下がってしまった)

今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、様々なパターンで一般道と高速道路を走った区間(約90km)が7.7km/L。また一般道でエコドライブに徹した走った区間(約30kmを計2回)が8.8km/L、9.7km/Lだった(いずれもエアコンはオン)。

なお、「2.8FSI」の10・15モード燃費とJC08モード燃費は共に11.8km/L(セダンとアバントで共通)。V6エンジン、フルタイム4WD、車重1.8トン超の非ハイブリッド車としては優秀な数値では。

また「3.0 TFSI」の10・15モード燃費は11.2km/L(セダンとアバント共通)、JC08モード燃費はセダンが11.4km/L、アバントが空力性能の差か、少し落ちて11.0km/Lになる。燃料タンク容量は65リッターで、もちろんハイオク仕様。

ここがイイ

いかにも高級車らしい上品な乗り味。クワトロの安心感。アイドリングストップの装備

いかにも「金持ち、喧嘩せず」といった感じの上品の乗り味。パワー感はそこそこだが、エンジンを上まで回した時の音はいいし、その気になれば十分速い。雨天の高速道路では、安心感という点でほとんど無敵であろう。アバントなら荷物も積めるし、暴力的な速さ以外の全てが揃っている。

アイドリングストップをぬかりなく標準装備としてきたこと。発進時に若干のショックはあるものの、このクラスのアイドリングストップ機能としては、ハイブリッド車を除いて最も洗練されたものの一つでは。アイドリングストップ中にオーディオ(標準装備のBOSEでも音は十分に良い)の音量がさりげなく下がる気遣いも嬉しい。まるで日本車みたいだ。

ここがダメ

MMIタッチの使い勝手。フットレストの遠さ。先進安全装備が標準ではないこと

MMI タッチの使い勝手。デフォルトの状態でパッドに触れた場合は、ラジオの選局が出来るが、選局くらいなら何もタッチパッドではなく、ステアリングスイッチの方が簡単だし、MMIコントローラーでも操作出来る。またナビ画面にしている時は、MMIタッチで地図のスクロールが出来るが、この時もデフォルトはラジオの選局で、スクロール操作に切り替えたい場合はMMIコントローラーでメニューボタンをクリックする必要があるなど、いちいち面倒。手書き入力についても、右ハンドル車では左手ですることになり、いかにもやりにくい。そういったわけで、タッチパッドの将来性は否定しないが、今のところは出来ることが限定的で、発展途上のデバイスと言える。

 

やはり運転席の左足もとが狭く、またフットレストが遠いこと。かなり足が長くないと、フットレストで左足を踏ん張るのは難しいのでは。短足日本人としては思わず「ゲタ」を履かせたくなる。

2.8 FSIの場合、戦略的な価格とするためではあるが、アダプティブクルーズコントロール、アウディサイドアシスト、ナイトビジョン、リアサイドエアバッグといった「一つ上の」安全装備はすべてオプション。レザーシートこそオプションでいいから、こういった高級車ならではの安全装備が標準で欲しい。

総合評価

日本でもまさに「カンパニーカー」

今回の試乗車はアバントだが、まずはA6 セダンの話から。いつも書く通り、このクラスのアウディ製セダンは100の時代からスタイルが地味だ。でも地味な方が正解だと思う。保守的と言われてもいいから、地味な方がいい。なぜって、人目につくこと、目立つことは、セダンにとってはあまりよろしくないことだから。派手なクルマに乗りたいなら、選択肢は他にいくらでもある。セダンは人目につかないことが肝要。

特にこのクラスは地味であることが求められる。欧州ではカンパニーカー(役員に与えられるクルマ。主に高級車)らしいし、日本でもほとんどそうだからだ。要は日本だと中小企業のオヤジが乗るのに最もふさわしいクラスということ。価格もクラウンの最上級グレードと大差ないから、中小企業の経費でも買いやすい(セダンなら経費で落とせます)。クラウンからメルセデスベンツ、BMWに乗り換えるのは目立つが、アウディなら大丈夫だろう(税務署的にも、たぶん)。またこれまで旧A6に乗ってた人なら、新型に買い換えてもほとんど気づかれない(これも、たぶん)。

 

それでも分かる人には「おっ、新型だね」とか、「内装に高級感が出たねえ」とか言ってもらえて、クルマ好きであればクルマ談義が盛り上がるはず。実際その仕上がりのクォリティは日本車をしのぎ、まさに世界の一流品だ。所有する満足度は高い。商談にゴルフにと乗り回す、日常使いのクルマでもあるから、サイズ感が大き過ぎない点もいいし、距離を走るから燃費も良いほうがありがたい。こんな世の中でも会社の景気がそこそこ悪くない中小企業は多く、そこの社長さんにとって新しいA6は、本当に「ちょうどいい」クルマだろう。その意味で、このクルマは日本でもまさにカンパニーカーだ。

確信犯的な「保守」

で、セダンではなく、今回試乗したアバントであれば、なおよろしい。ワゴンとなればステイタス感は一段と高まるし、日本車にはこのクラスのワゴンは存在しない。フランス車のワゴンはいかにもエンスー、いかにもマイナー(笑)だが、A6 アバントは何となくオシャレで、スーツでもジーンズでも乗れる。ちょいワル(今や死語?)な中小企業オヤジの日常使いの愛車としては、これほど決まるものはない。そんなちょいワルオヤジが実はまだまだ多いからか、アウディの販売は今も絶好調だ。特にこのA6は一見、地味めのクルマゆえ都会の人だけでなく、地方在住の人でもそう人目を気にせず買えるというのが強みだろう。

で、実際にA6 アバントに乗ってみると、これがもう「昔からのいいクルマ感」がいっぱい。地に足がついた感のあるクワトロのロードホールディングは、これまでいろいろなクルマに乗ってきたクルマ好きなら、率直に「いいクルマだなあ」と思えるだろう。

 

また走行モードを切り替えれば適度なスポーティさが味わえるし、「おつりが来ない」安定したハンドリングも心地良い。欧州車らしく少し硬めで、それでいて快適な乗り心地は昔からの輸入車乗り、そして昔からのクルマ好きなら思わず笑みが出るほど納得できるもの。先回レポートした新型BMW・3シリーズが新しい走り味を模索していたのとは真逆の、実に保守的な「いいクルマ感」に満ちた走りだ。内装の高級感も一切奇をてらわず、教科書通り。ナビモニターも必要ないなら格納できる。そう、このクルマの場合、スタイリングから走りまで確信犯的な「保守」が貫かれている。まさに保守本流のセダンであり、ワゴンだ。

アナログを愛するオヤジへ

そこをよしとするかどうか。よしとする人には、おそらく何一つ不満はないが、よしとしない場合は、例えば操作インターフェイスにおいて、MMI はもはや古いと感じたり、せっかくのタッチパッド(MMI タッチ)は右手で操作しないと無理でしょ(右利きの場合)とか思うのでは。また、せっかくアウディに乗るなら、A7とかA5とか、スタイリングにもっと華のあるクルマが欲しいとも思う。

しかしまあ、そういったことを思わないのであれば、このあと5年、何の不満もなく乗リ続けられるだろう。そしてたぶん5年後に現れる新型車は、今のクルマとかなり変わっているはずだから、その頃に新しいテイストのクルマ(ハイブリッドなのか、EVなのか、ディーゼルなのか、はたまたガソリン車でも画期的なクルマなのか)がたくさん出ているはず。とはいえ、このクルマに5年も乗ると、そういうクルマには乗りたくない気持ちがより強まるような気もするが。

 

iPadを使いこなすようなIT系中小企業のオヤジは、たぶんこのクルマを好むことはないだろう。アナログな機械物を愛する人、いわゆる本物志向の人、そういう人になら、気に入ってもらえるはずだ。昨今は中小企業のオヤジもクルマにばっかり時間をかけていられない(はず)。その意味ではクルマは保守的な輸入車でかまわないので、仕事の方に時間をたっぷり割いて「革新的な何か」を生み出してもらいたいものだ。日本の未来のためには、中小企業のオヤジにがんばってもらうしかない。A6はそのご褒美だ(という締めも相当アナログならぬ、アナクロかも…)。

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BMW 328i スポーツ:新車試乗記 http://www.eurocars69.com/archives/29982 http://www.eurocars69.com/archives/29982#comments Fri, 13 Apr 2012 19:23:14 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29982 キャラクター&開発コンセプト

主力エンジンは直4ターボに。燃費性能は大幅に向上

歴代3シリーズ。右奥から初代(E21)、2代目(E30)、3代目(E36)、4代目(E46)、5代目(E90)、そして6代目(F30)
(photo:BMWジャパン)

約7年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型3シリーズは、1975年に登場した初代(E21型)から数えて6世代目。コードネームは代々「E+数字」だったが、新型は新しい流儀に基づき「F30」と呼ばれる。欧州では2011年秋に発表され、日本では2012年1月に発売された。今のところ、新型に切り替わったのは本国でもセダンのみだ。

日本市場に真っ先に導入されたのは、新世代の2リッター直列4気筒・直噴ツインスクロールターボエンジン(N20B20A)を採用した「328i」。このエンジンは従来の直列6気筒NA版に代わるもので、最高出力は180kW(245ps)、最大トルクは350Nm(35.7kgm)と排気量3リッター並み。昨今のダウンサイジング化を象徴するユニットになっている。

 

新型BMW 328i
(photo:BMW ジャパン)

また4月9日には基本的に同型エンジン(形式は末尾が異なりN20B20B)ながら、最高出力を25%減の135kW(184ps)、最大トルクを23%減の270Nm(27.5kgm)に抑えた「320i」を追加している。

いずれも、このクラスでは最も多段の8速AT、そしてアイドリングストップ機構、ブレーキ・エネルギー回生システム、いわゆるエコモードの「ECO PRO(エコ・プロ)」モード等を採用。これらによってJC08モード燃費は328iで15.2km/L、320iでは16.6km/Lと(いずれも8AT仕様)、同クラスの純ガソリン車でトップクラスの低燃費を実現している。

価格帯&グレード展開

ひとまず「328i」と「320i」を導入

新型BMW 320i。と言っても外観における328iとの差はホイールくらいか
(photo:BMW ジャパン)

欧州には各種ガソリンエンジンやディーゼルターボもあるが、日本仕様は前述の通り、2リッター直4ターボと8速ATの「320i」と「328i」。4WDは今のところなく、すべてFR。最も安いのはバイキセノンヘッドライト等を省いたエントリーグレード「320i SE」(399万円)だが、おおむね320iは400万円台、328iは500万円台後半になる。

8.8インチワイドディスプレイやiDriveを備えたHDDナビは320iを含めて全車標準。320i SEと320i(標準グレード)は16インチタイヤを、328i(標準グレード)は17インチタイヤ(225/50R17)を、その他の上級グレードは18インチタイヤ(225/45R18)が標準。1シリーズで始まった「デザイン・ライン」は新型3シリーズにも導入され、内外装は「Sport」「Modern」「Luxury」といったテーマに沿ってコーディネイトされる。

またユニークなのは、320iに関してはSEを除く全グレードで6MTが選べること。6MTを積極的に用意する姿勢はMINIと同じだが、これを3シリーズでやるところがBMWらしい。

 

「デザイン・ライン」に合わせて、リモコンキーもカラーコーディネイト
(photo:BMW ジャパン)

■320i SE    399万円(8AT)
■320i     450万円(↓)・439万円(6MT)
■320i Sport   470万円(↓)・459万円(↓)
■320i Modern    ↓ 円(↓)・ ↓ 円(↓)
■320i Luxury     ↓ 円(↓)・ ↓ 円(↓)

■328i     570万円(8AT)
■328i Sport  586万円(↓)  ※今回の試乗車
■328i Modern    ↓ 円(↓)
■328i Luxury    ↓ 円(↓)

 

秋にはハイブリッドも追加

なお2012年秋には、ハイブリッド車の「アクティブハイブリッド3」も日本に導入予定。これは335i(欧州仕様のみ)に搭載される225kW(306ps)の3リッター直6ターボに、40kW(54ps)の電気モーターを組み合わせたもの。システム全体で250kW(340ps)と450Nm(45.9kgm)を発揮する。動力性能やキャラクターがオーバーラップする335iは、日本には導入されない模様。

パッケージング&スタイル

よりワイド感を強調。例のリングは角丸に

BMWの次世代モデル「i8」に似た顔つき

先代よりヘッドライト位置が低く、キドニー・グリルがよりワイドになったことで、ぐっとスポーティになった新型3シリーズの顔。左右に末広がりのヘッドライトは新型1シリーズほどファニーではなく、キリッとした感じ。ただ、それより先に視線が向かうのは、ほんの少しスクエアになったヘッドライト内のLEDスモール・ライト・リングか。おかげで新旧を見間違えることはない。

 

ここから見ると5シリーズに似ている

BMW伝統のL字型リアコンビランプ、3センチもワイドになったトレッドなど、後ろ姿は現行5シリーズと見紛うばかり。先代クーペのような水平基調のラインやワイド感が盛り込まれたことで、リアも普通にカッコ良くなった。

WBを50mm伸ばすも、サイズアップは最小限

より伸びやかになったシルエット。Cd値は0.29

ボディサイズ(先代比)は全長4625mm(+85)×全幅1800mm(同)×全高1440mm(+25)、ホイールベースは2810mm(+50)。つまり全長とホイールベースが伸びたわけだが、下の表を見ても分かるように、無闇に大きくはなっていない。クラウンどころか、マークXよりも小さいくらいだから、日本でも不自由ないサイズ。

 

   
全長(mm)
全幅(mm)
全高(mm)
WB(mm)
最小回転半径(m)

BMW 先代3シリーズ(E90型)
4540
1800
1425
2760
5.3

レクサス IS
4585
1795
1445
2730
5.3

メルセデス・ベンツCクラス(W204型)
4595
1770
1445
2760
5.1

BMW 新型3シリーズ(F30型)
4625
1800
1440
2810
5.4

アウディ A4
4720
1825
1440
2810
5.5

トヨタ マークX
4730
1795
1435
2850
5.2

 

インテリア&ラゲッジスペース

先代から正常進化。手堅い機能、充実した装備

試乗車は「スポーツ」。定番の黒を基調に、アクセントラインやアルミパネルが備わる

インパネはBMWらしくドライバーを取り囲むようにセンター部分が7度傾いたもの。電子制御シフトレバーや改良型iDriveコントローラー等はすでに見慣れたもので、むしろ例の「デザイン・ライン」によるコーディネイトの方が目立っている。試乗車は黒基調に赤いラインが入った「Sport」だが、ベージュ内装と柾目のウッドパネルが張られた「Modern」なども斬新だ。

 

メーターのレタリングは昼間は白、夜間はオレンジ(赤)

320iのエントリーグレードを含めて、HDDナビゲーション・システム、高解像度8.8インチ・コントロール・ディスプレイ、iDriveコントローラー、コンフォートアクセス(いわゆるスマートキー)などは標準装備。またシートの座り心地、ポジション調整幅も完璧。こういうところは本当にBMWは徹底している。

 

8.8インチのワイドモニター。各種の車両設定や情報表示も可能

電子制御シフトレバー、iDriveコントローラーを標準装備

試乗車は背もたれサイドサポートの幅も電動で調整できた

 

もはや一昔前の5シリーズ並み

もはや広さに不足はない後席。座面は低めだが、それほど閉塞感はない

4代目あたりまでは、フットルーム不足が3シリーズの大きな課題だったが、今やそんな悩みは過去のもの。ホイールベース(以下WB)は3代目E36で2700mm、4代目E46で2725mmだったが、5代目で2760mmになり、新型ではさらに50mm伸びて2810mmと、もはや一昔前の5シリーズ並み。後席ニー・ルームは先代より15mm広くなったとのこと。

座り心地も悪くなく、短時間なら3人掛けも一応可能。たまに欧州車にある「背もたれが立ち過ぎ」感もない。

トランク容量は20リッター増

トランク容量は先代比20リッター増の480リッター。ランフラットタイヤ(スペアタイヤレス)が貢献しているのは確かだが、このあたりの広さも2世代くらい前の3シリーズからすれば隔世の感がある。もちろん後席の背もたれを倒してのトランクスルーも可能(320i SEを除いて40:20:40の分割可倒式)。

 

床下の奥は小物入れ。手前の床下にはマフラーが収まる

なお、全車標準の「コンフォート・アクセス」には、キーを携帯してリアバンパー下部に足を入れるとトランクリッドが開く「トランクリッド・スマート・オープナー機能」が備わる。荷物で両手がふさがっていても大丈夫というもの。

基本性能&ドライブフィール

ほぼ「全域」で最大トルク35.7kgm

試乗したのは「328i スポーツ」。パワートレインは前述の通り、2リッター直4ターボで、「バルブトロニック」「直噴」「ツインスクロールターボ」と、最先端ガソリンエンジンの「三種の神器」が揃ったもの。最大トルクの350Nm(35.7kgm)は1250~4800回転、つまり事実上ほぼ「全域」でフラットに発揮される。まるで電気モーターみたい。

 

「BMWツインパワー・ターボ・エンジン」と称される2.0リッター直4の直噴ターボ
(photo:BMW ジャパン)

実際のところ、その力強さには思わず感心してしまう。低燃費優先の「エコ・プロ」モードで大人しく走る限り、8速ATはこまめに変速して1200~2000回転くらいを律儀にキープするが、この領域で最大トルクを発揮するのは前述の通り。で、実際、1200回転からアクセルを少し踏み込めば、即座に分厚いトルクが立ち上がり、ジワリと加速する。8速もあるのに、安易にキックダウンしないのは、とにかくトルクがあるから。VWアウディの直噴ターボエンジンもすごいが、BMWの場合はバルブトロニックがある分、低回転域(スロットル開度の少ない領域)の効率で一歩リードしている感あり。

また、このエンジン特性を余すことなく引き出しているのが、前述の「エコ・プロ」モード。ノーマルモードに相当する「コンフォート」モードより常に一段高いギアを使い、スロットルに対するレスポンスもボヤッとするが、先を急がなければ、これでも問題ない。エアコン等の制御もエコ優先になるようだ。先回試乗したイヴォーク(あれも2リッター直噴ターボ)にも、こういうのがあればいいのに。

 

1シリーズ同様、アイドリングストップのオフボタンはエンジン始動ボタンと一体化されている。ちょっと押しにくい

エンジンが温まれば、アイドリングストップを開始。新型ポルシェ 911でもアイドリングストップする時代だから、今や珍しいものではないが、1シリーズ同様に気になったのは、再始動時にちょっとだけ「ドゥルンッ」とショックがあること。スターターノイズは大きくなく、クランキング時間も短いが、クランクが回るときのトルクリアクションが主な要因という感じ。マツダのi-Stopのように洗練されたものと比べると、もう少し、と思ってしまう。ま、丸一日も乗っていると慣れてしまうが。

頭打ち感なし。0-100km/h加速は535iと一緒

新型328iの魅力はエコだけにあらず。最高出力は2リッターターボとしてはトップクラスの180kW(245ps)。そしてなトルクも3.5リッター並みなので、中間加速に淀みは一切ない。特に「スポーツ」モードでは、低めのギアで鋭くレスポンスし、「コォォォォン!」と突き抜けるようなサウンドで一気にゼブラゾーン(6500回転以上)まで回り切る。最高出力の発生ポイントは5000回転と低いが、そこを過ぎても頭打ち感はまったくない。

しかも8ATの変速はDCTに迫るほど素早く、ギアが8段もあるから、つながりもやたらいい。シフトアップ直後の息つぎはほぼ皆無。感覚的には3リッター直6ターボの新型535i、あの加速感を4気筒で実現した、みたいな感じ。と書いた後、メーカー発表値を見たら0-100km/h加速は両方とも全く同じ6.1秒だった。

スポーツ+で「駆けぬける歓び」

右が「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」の切替スイッチ。「エコ・プロ」、「コンフォート」(始動時のデフォルト)、「スポーツ」、そして一部モデルで「スポーツ+」が選べる

もちろんハンドリングもBMWらしい。あくまでドライバーが主役であり、ボディからタイヤの先に至るまでガチッビシッとした剛性感、重量配分の良さなど、素材の良さで勝負している。電動パワーステアリング(ギア比を可変するバリアブル・スポーツ・ステアリングはオプションで、試乗車は未装着)の操舵力は軽く、街中では頼りないほどだが、スポーツモードでは適度に引き締まり、ステアリングと進行方向が直結しているようなダイレクト感が味わえる。この瞬間がBMW。

さらに、らしいのがトラクションコントロールを限定的に解除する、つまりある程度までリアのスライドを許容する「スポーツ+」モードも備えること(Sport および一部オプション装着車のみ)。路面がウエットだったことを幸いに、あくまでクルマの動きを見る範囲で試したが、この場合は絵に描いたようなFRハンドリングが楽しめる。

ちなみに328iの場合、車検証数値による前後重量配分は見事に50:50(780kg:780kg)。4気筒ということでフロントヘビー感もない。ただ、新型1シリーズの仰天ハンドリングを思うと、今回はまあ期待通り、といったところか。モーターデイズで試乗した116iに比べて、328iは160kgほど重い上に、もちろんボディも一回り以上大きい。おまけに馬力はおよそ1.8倍、トルクはおよそ1.6倍もあり、少々持て余した、というのが正直なところ。1シリーズは振り回せて楽しめるが、225/45R18タイヤを履くこの328i スポーツはそこまでやるには限界が高すぎる。

最高速は250km/h(リミッター作動)

タイヤは全車ランフラット。試乗した「Sport」は18インチ

100km/h巡航は8速トップで約1700回転。この8速トップでは約70km/h、約1200回転での巡航も可能で、そこからアクセルを踏み込めば、瞬間的に数段まとめてキックダウンし、「335i、要らんかも」というくらいの勢いでグングン加速してゆく。最高速はリミッターが作動する250km/h(メーカー発表値)。ただ、320iの最高速も233km/h(6MTは235km/h)と十分ではあるが。

高速域の直進安定性も、当然ながら問題なし。ただ、一昔前のドイツ車にあったドッシリ感はなく、やはり全体に軽い感じはある。静粛性は高く、特にロードノイズの遮断は入念。今回は土砂降りの中での試乗となったが、大きな水たまりに入った時のスプラッシュ音が、何か別の音に聞こえたほど。高速域ではドアミラー部分に少し風切り音が出たが、それも全体に静かだから聞こえた気がする。

乗り心地に関しては、やはり3シリーズということで決してメルセデスのようにしっとりした滑らかさはなく、やはり硬質だが、先代デビュー時のようなビシバシ感はない。タイヤはランフラットが標準だが、今やそこにネガはない。

試乗燃費は10.1~15.6km/L

空いた一般道を30km走って、15.6km/Lを出した時の図。かなり気合をいれてエコドライブ

今回はトータルで270kmを試乗。参考までに試乗燃費は様々なパターンで一般道と高速道路を走った区間(約90km)が10.1km/L。「エコプロ」モードでエコドライブに徹した走った区間(約30kmを計3回)が14.0km/L、15.0km/L、15.6km/Lだった(いずれもエアコンはオン)。50〜60km/h巡行時の燃費がすこぶる良いことが、平均燃費を押し上げた格好。

ちなみに328iの10・15モード燃費は、3リッター直6の先代325i(12.6km/L)より24%優れる15.6km/Lだが、エコドライブの基礎知識と好条件さえあれば、実際にモード燃費で走ることは難しくない印象。下記の表にもあるように、燃費性能はこのクラスの純ガソリン車でトップクラスだ。

 

   
エンジン
変速機
最高出力kW(ps)
最大トルクNm(kgm)
10・15モード燃費(km/L)
JC08モード燃費(km/L)

新型BMW 320i
2.0L直4ターボ
8AT
135(184)
270(27.5)

16.6

新型BMW 328i
2.0L直4ターボ
8AT
180(245)
350(35.7)
15.6
15.2

先代BMW 320i(最終モデル)
2.0L直4
6AT
125(170)
210(21.4)
15.2
14.2

アウディ A4 2.0 TFSI
2.0L直4ターボ
CVT
132(180)
320(32.6)

13.8

アウディ A4 2.0 TFSI クワトロ
2.0L直4ターボ
7速DCT
155(211)
350(35.7)

13.6

メルセデス・ベンツC200 BlueEFFICIENCY
1.8L直4ターボ
7AT
135(184)
270(27.5)
14.0
13.6

メルセデス・ベンツC250 BlueEFFICIENCY
1.8L直4ターボ
7AT
150(204)
310(31.6)
13.8
13.2

メルセデス・ベンツC350 BlueEFFICIENCY
3.5L V6
7AT
225(306)
370(37.7)
13.4
12.8

先代BMW 325i(最終モデル)
3.0L 直6
6AT
160(218)
270(27.5)
12.6
11.6

レクサス IS250
2.5L V6
6AT
158(215)
260(26.5)
12.2

レクサス IS350
3.5L V6
6AT
234(318)
380(38.7)
10.0

 ※「先代」とあるものを除き、表内はすべて2012年4月現在の現行モデル

ここがイイ

エンジン、熟成のiDriveなど

とにかくエンジン。一度このエンジンを味わえば、直6を懐かしむ気持ちはどこかへ行ってしまうのでは。バルブトロニック+直噴ターボならではの、ほぼ全回転域におけるトルク感、全回転域におけるレスポンスの良さ、さらに高回転域の軽快な吹け上がりといったものが、ステップ比の小さい8速ATによって途切れなく繰り返される。国産メーカーのエンジニアが乗ったら、これに対抗するガソリンエンジンを作ろうとする前に、「こりゃ勝ち目がない。うちはハイブリッドしかない」と腹をくくってしまいそう。VWアウディの直噴ターボもすごいが、バルブトロニック技術を手なづけた感のあるBMWが一歩先を行っている感じがする。

 

使いやすくなったiDrive。今から10年前に出た初期iDriveは、いったいどうなることかと前途多難に思えたものだが、今やショートカットキーも随分増えて、すっかり落ち着くところに落ち着いた感じ。操作スイッチを徹底的に減らす、という当初の理想は崩れ去ったが、今やこの手のものでは一番手堅いものに進化したかも。ディスプレイが横長で二画面表示がしやすく、位置もたいへん良い。また無理に格納式にしなくて正解。

右ハンドルでも、左足のスペースが狭いとは感じないこと。足もとが広いとは言いがたいが、FRながらアウディA4より広いことは確か。

ここがダメ

アイドリングストップ再始動時の振動。プリクラッシュ系安全装備の不備。その他、こまごま

新型1シリーズにもあったアイドリングストップからの再始動時の振動は、この3シリーズにも残っている。本文にあるように、慣れてはしまうが、無いに越したことはない。

走りに関しては、これだけハイレベルでありながら、ハイテク系の予防安全装備に見るべきものがないこと。この価格帯のクルマであれば、ボルボで言えばシティ/ヒューマンセーフティ、スバルで言えばアイサイトのようなプリクラッシュセーフティ系の安全装備をそろそろ標準で搭載しているべきだ。

また、「ここがイイ」で評価したiDriveも、スマホやタブレットPCのような直感的な使いやすさがあるわけでなく、今となっては既存技術を最高に熟成・改良した、というもの。新しい提案がほしい。

地デジはサイドブレーキを引いたり、シフト位置をPに入れたりする必要はなく、停止するだけで表示されるが、いかんせん走りだすと画面には「走行中は音声だけでお楽しみください」みたいな表示だけになり、8.8インチディスプレイは無意味になる。ナビを見るには、いちいちボタン操作が必要だが、そうすると今度は停止しても地デジが表示されない。これはBMWに限ったことではないが、他社にあるように停車中は地デジ、走りだせばナビ表示で何ら問題ないので、出来れば方針を変更してもらいたいもの。

 

普段はエコプロモードのままでいい、と思う人も少なくないと思うが、実際にはエンジン再始動時には(アイドリングストップ時を除く)、デフォルトのコンフォートモードに戻ってしまう。あくまで走りとエコの両立を追求するというBMWらしい設定だが、走りだす度にいちいちエコプロモードを選ぶのがやや面倒に感じられた。他社のモデルでは、エコモードで終わればエコモードで始まる、というものが多く、それでいいような気がするのだが。もちろん、スポーツモードでエンジンを切っても、始動時にはコンフォートに戻ってしまう。

328iは確かにパワフルだが、こと日本で乗る限りは最高出力184psにデチューンされた320iでも十分かも。

総合評価

今までの「いいクルマ」ではない

本文にあるように、まあ、ほんとうに素晴らしくよくできたクルマだ。快適で、よく曲がり、速い。一切文句なし、と言いたいところだが、「何だろう、乗った後のこの不思議な違和感は」と自問。どんなタイプのクルマでも、いいクルマは乗ればだいたいすぐに分かるもの。いわゆる「いいクルマ感」というのは、自分の体とクルマが一体になって、四輪が自分の足のように路面をつかみ、その上で思ったように加速し、曲がり、そして止まるという感覚だ。そしてそうした一連の動きを支えるガッシリしたボディ。トルクとパワーは踏むほどに盛り上がり、ギアはスムーズに変わり、しっかり重めのステアリングフィール。今までいいクルマと言ってきたのは、だいたいそんなクルマが多かったと思う。

だがこのクルマは違う。何しろすべてがウルトラスムーズだ。トルクもしくはパワー感はアクセルを踏んだ瞬間からやたら大きく、それが盛り上がることなくフラットに持続する。ギアが8速もあるせいか、何速に入っているかをドライバーには意識させず、まるで無段変速か強力な電気モーターであるかのよう。ステアリングは軽からず重からず、行きたい方向に意識を向けるだけという感覚で操作すればいい。それで軽々と曲がっていく。変に意識した方が挙動はばたつく。極端に言えば操作しなくてもいいと思えるほど。先代の分かりやすいスポーティさとは別物だ。

 

(photo:BMW ジャパン)

4輪は路面をつかんでいるはずだが、その感覚は薄く、それでいてグリップは強大。試乗中は土砂降りだったが、まるでドライのようにコーナーを駆け抜けていく。ランフラットタイヤなのに乗り心地がよく、路面のゴリゴリは伝わってこない。一枚フィルターをかけたような、まさにスマートな走り。燃費もすごくいい。これまで感じてきた「いいクルマ感」などすでに過去のものだ、と言わんがごとく、一段上のレベル(なのだろう、たぶん)にある走りと乗り味を提示する。

このクルマは誰もが「いいクルマだ」と評する類のものではないかと思う。快適さ、上質さ、速さ、そして燃費、さらにはブランド力、すべていい。となると、これまで「いいクルマ」と言ってきたのは、所詮クルマ好きのたわごとだったのか、とすら思う。クルマ好きとしてはちょっと悔しい気分の、まさに「次なる世代のクルマ」だ。しかし、これがいいのかと問われると、どうにも「うーん」と唸るしかない。

家電の状況がクルマ業界にもやってくる

この感覚は、そう、出てきたばかりの頃のiPadに似ているかも。オーソドクスなモバイルPCを長年使ってきた身としては、あの新しい感覚のモバイル機器はたしかにいいとは思ったが、馴染めなかった。新しいけど、やってることは別にモバイルPCで十分なのに、と思った。何より、自分でいじれる自由度がないことが不満だった。同じパッドでもアンドロイド系にはまだ未完成の楽しさがあった。

それに似た印象をこのクルマにも感じてしまう。今までのいいクルマは、よくできたPC。このクルマはiPadのようなものだ。同じ情報端末でも、使い勝手はまるで違う。ウルトラスムーズなGUI(グラフィック ユーザー インターフェイス)で、そこにiTunesによって管理されたアプリが載って、誰もが使いやすい機械となったiPad。その結果、苦労を重ねて使うPCというものが過去の遺物、あるいは業務用のツールとなりつつある。クルマもいよいよそういう段階に入りつつあるのかもしれない。

そういえばiPadなどアップル製品の好きな人は、BMW好きであることが多い。デザインや機能に対するこだわり、ブランドイメージなどに通じるものを感じるのだろう。iPadを持ち、BMWに乗るおしゃれなIT関係者は多い。そんな人にはたぶん、旧型よりも新型の乗り味の方がより好ましく思えるはずだ。

 

この方向性は本来、トヨタが目指していたものに近いかもしれない。しかしトヨタがここ数年ウロウロしてる間に、BMWがやってしまった。赤字に陥った日本の家電メーカーがiPadを出せなかったように、クルマに関してもiPadのような別次元の商品がまた海外から出てきてしまっている。ソニー、シャープ、パナソニックと大手家電メーカーが大赤字を出し、韓国勢に追い上げられる状況を尻目に、最高益を叩きだすアップル。このクルマに乗っていると、そんな状況がクルマ業界にもやってくるのじゃないかという危機感を覚えてならなかった。特にこのクラスのセダンが全く弱い日本車にとって、そしてブランドという目に見えないバケモノをコントロール出来ない日本のクルマ業界にとって、新型3シリーズはまさに脅威だろう。

 

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自賠責が赤字。その原因の一つは私かもしれない:編集長コラム 水野誠志朗\’sトーク http://www.eurocars69.com/archives/29981 http://www.eurocars69.com/archives/29981#comments Tue, 10 Apr 2012 00:04:14 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29981 ▲自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責が赤字ということで、今年(2011年)4月から保険料が引き上げられていることをご存じだろうか。自賠責がどう運営されているのか、なぜ赤字なのかが今ひとつはっきりしないが、いずれにしても事故での支払いが多いということに関しては間違いないようだ。私も昨年、この保険が大量に払われた事故に遭遇したので、報告しておきたい。ちょっと、なんだかな、と思う話だ。

▲まずその事故だが、四十絡みの女性が乗る自転車に、私のクルマがかすったというもの。事故状況だが、横断歩道で止まった私のクルマの前を横切った自転車の駐輪スタンドの後端に、少し動き出した私のクルマ前部がかすった(らしい)。女性は子供を自転車後部のチャイルドシートに乗せていた。クルマ側にはなんら衝撃は無く、そのまま通り過ぎるところだったが、自転車を止めて振り向いた女性がわめいているので、クルマを止めると、当たったと言う。むろん自転車は倒れてなどいないし、クルマを見ても当たった形跡がないので、そんなことはないというと、足が痛いと言い出した。当たり屋ではないかと疑ったくらいの強い語気に、それなら警察へ行こうと近所の交番へ。この時は特に痛がる様子もなかったのだが。

▲交番で事故処理班を呼んでもらい、現場検証したが、そこで私のクルマのバンパー下にごく小さな擦り跡があり、ここに接触したのだろうということに。そうなれば致し方ないので、こちらも下手に出ることにしたのだが、そうすると今度は後ろに乗っていた子供も体が痛いといっていると言いだした。さすがにこれは普通じゃないなと思ったが、警察とも話をして、一週間様子を見て人身事故にするかどうか決めるということでその日は別れた。翌日、お詫びとして菓子折を持って事故現場すぐの自宅に行くと、受け取らない。保険屋と話すから受け取れないという。今までいくつもの事故に対応してきたが、この時点でちょっとやっかいな人であると再確認した。

▲一週間過ぎたら警察から連絡があり、案の定、先方は人身事故扱いにしたいと言っているとのこと。うちの保険会社と相談したが、そうした人だったら保険を使った方がいいでしょうとのアドバイスもあり、その後の対応は保険会社に任せた。そして私には軽微な人身事故(ただし女性と子供の二人分)ということで行政処分点4点がつけられた。おかげで累積6点になってしまい、以前のコラムで書いたように講習出席の次第となったのである。ただし、いわゆる罰金はまったく来なかった。警察としてもごくごく軽微な事故という認識だったからだろう。

▲それからは保険会社からの報告書を読んでいただけなのだが、後ろに乗っていたの子供には半年後に治療費約30万円、賠償金約50万円が支払われた。女性の方はそれからさらに半年以上(事故から1年以上)治療に通い続け、治療費約120万円、賠償金約150万円が支払われた。あとで見たら自転車にも修理代として4万円弱が支払われていた(もちろん壊れてなどいないが)。保険会社によると、本人はまだまだ通院すると言ったそうだが、さすがに保険会社もこれ以上はということで、多めの賠償金で手を打ったそうだ。クルマがかすっただけで実に350万円ものお金が支払われたのである。

▲自賠責は任意保険に優先して一人あたり120万円まで支払われる。つまり子供の分は全額自賠責から、女性の分は120万円が自賠責から支払われ、残りの150万円ほどが任意保険からの支払われた。人身事故の場合、このようにまず自賠責が使われる仕組みである。つまり120万円までは、任意保険会社の自腹は痛まない。このため割に支払いが甘いとされるが、それを超えると示談を急ぐ傾向にあるようだ。これを知ると自賠責が赤字になるのは、今回のケースのようにどんどん支払われてることも原因の一つではないかと思えてきた。

▲一般的には加害者という立場になる私だが、このケース、さすがに素直にごめんなさいという気になれない。保険会社によればこのような支払い事例は少なくないようだ。この女性に関しても、初めての事故ではなく、過去にそれなりに経験があるように思われるという。ただそうしたデータを自賠責は持ってはいないようだ。任意保険の会社では、自社が支払った人のデータベースを持っているようだが、それでも他社のデータまで見ることまではできないようで、いわゆるブラックリストのようなものは、公には存在していないという。同じ会社で二度目の事故請求となれば、当然それなりの対応をするようだが。

▲いずれにしても自賠責が赤字になっている中で、今回のような支払い事例を見てしまうと、まじめに自賠責のお金を支払っているドライバーがバカを見ているような気がしてくる。また死亡最大3000万円、けが最大120万円の自賠責では賠償金が全額支払いきれないケースが多い(今回もそう)。であれば自賠責などもう撤廃して、民間の自動車保険に一本化し、加入を義務づける方が合理的ではないだろうか。保険会社も支払いが慎重になるだろう。もちろん保険に入らない人はより厳しく取り締まるべきで、警察にも意味のよくわからない交通取り締まりばかりでなく、こちらにも力を入れてもらいたいもの。

▲また、多大な労力をかけて警察が現場検証をしてくれるのだから、個々の事故に応じて過失責任を算定する仕組みと、それに対する賠償を明文化できないものだろうか。今回のケースであれば、この保険金支払いが何だかちょっと変だと言える第三者は、当日の現場検証をして書類を作った(それゆえ行政処分を下した)警察しかいないのだから。何百万円ものお金が動く話なのだから、民事不介入の一言で済ましていいのかとも思う。どれだけ安全に気を使って運転していても、事故は起きるときには起きてしまう。その時の備えを、個人はもちろん、制度としても見直す時が来ているのではないだろうか。

▲昨年(2010年)の無保険車(自賠責未加入車)摘発が過去10年で最多の5385件に上っているという。自賠責に入っていない人はものすごく多いようだ。また無保険車によって事故にあった被害者を救済するため、国が賠償金を加害者(無保険車運転者)に代わって立て替える制度があり、そうして支払われた立替金を加害者から回収できなかった額は458億円に上るという。この制度では自賠責とほぼ同額が被害者に支払われるが、その原資は自賠責保険料の一部とのこと。今回、もし私が無保険車であった場合、どのように支払われただろうか。被害者であることを声高に主張すれば、この制度でも支払われるのだろうか。クルマを取り巻く問題の一つがこんなところにもある。

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自賠責が赤字。その原因の一つは私かもしれない:編集長コラム 水野誠志朗\’sトーク http://www.eurocars69.com/archives/29980 http://www.eurocars69.com/archives/29980#comments Sun, 08 Apr 2012 00:36:54 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29980 ▲自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責が赤字ということで、今年(2011年)4月から保険料が引き上げられていることをご存じだろうか。自賠責がどう運営されているのか、なぜ赤字なのかが今ひとつはっきりしないが、いずれにしても事故での支払いが多いということに関しては間違いないようだ。私も昨年、この保険が大量に払われた事故に遭遇したので、報告しておきたい。ちょっと、なんだかな、と思う話だ。

▲まずその事故だが、四十絡みの女性が乗る自転車に、私のクルマがかすったというもの。事故状況だが、横断歩道で止まった私のクルマの前を横切った自転車の駐輪スタンドの後端に、少し動き出した私のクルマ前部がかすった(らしい)。女性は子供を自転車後部のチャイルドシートに乗せていた。クルマ側にはなんら衝撃は無く、そのまま通り過ぎるところだったが、自転車を止めて振り向いた女性がわめいているので、クルマを止めると、当たったと言う。むろん自転車は倒れてなどいないし、クルマを見ても当たった形跡がないので、そんなことはないというと、足が痛いと言い出した。当たり屋ではないかと疑ったくらいの強い語気に、それなら警察へ行こうと近所の交番へ。この時は特に痛がる様子もなかったのだが。

▲交番で事故処理班を呼んでもらい、現場検証したが、そこで私のクルマのバンパー下にごく小さな擦り跡があり、ここに接触したのだろうということに。そうなれば致し方ないので、こちらも下手に出ることにしたのだが、そうすると今度は後ろに乗っていた子供も体が痛いといっていると言いだした。さすがにこれは普通じゃないなと思ったが、警察とも話をして、一週間様子を見て人身事故にするかどうか決めるということでその日は別れた。翌日、お詫びとして菓子折を持って事故現場すぐの自宅に行くと、受け取らない。保険屋と話すから受け取れないという。今までいくつもの事故に対応してきたが、この時点でちょっとやっかいな人であると再確認した。

▲一週間過ぎたら警察から連絡があり、案の定、先方は人身事故扱いにしたいと言っているとのこと。うちの保険会社と相談したが、そうした人だったら保険を使った方がいいでしょうとのアドバイスもあり、その後の対応は保険会社に任せた。そして私には軽微な人身事故(ただし女性と子供の二人分)ということで行政処分点4点がつけられた。おかげで累積6点になってしまい、以前のコラムで書いたように講習出席の次第となったのである。ただし、いわゆる罰金はまったく来なかった。警察としてもごくごく軽微な事故という認識だったからだろう。

▲それからは保険会社からの報告書を読んでいただけなのだが、後ろに乗っていたの子供には半年後に治療費約30万円、賠償金約50万円が支払われた。女性の方はそれからさらに半年以上(事故から1年以上)治療に通い続け、治療費約120万円、賠償金約150万円が支払われた。あとで見たら自転車にも修理代として4万円弱が支払われていた(もちろん壊れてなどいないが)。保険会社によると、本人はまだまだ通院すると言ったそうだが、さすがに保険会社もこれ以上はということで、多めの賠償金で手を打ったそうだ。クルマがかすっただけで実に350万円ものお金が支払われたのである。

▲自賠責は任意保険に優先して一人あたり120万円まで支払われる。つまり子供の分は全額自賠責から、女性の分は120万円が自賠責から支払われ、残りの150万円ほどが任意保険からの支払われた。人身事故の場合、このようにまず自賠責が使われる仕組みである。つまり120万円までは、任意保険会社の自腹は痛まない。このため割に支払いが甘いとされるが、それを超えると示談を急ぐ傾向にあるようだ。これを知ると自賠責が赤字になるのは、今回のケースのようにどんどん支払われてることも原因の一つではないかと思えてきた。

▲一般的には加害者という立場になる私だが、このケース、さすがに素直にごめんなさいという気になれない。保険会社によればこのような支払い事例は少なくないようだ。この女性に関しても、初めての事故ではなく、過去にそれなりに経験があるように思われるという。ただそうしたデータを自賠責は持ってはいないようだ。任意保険の会社では、自社が支払った人のデータベースを持っているようだが、それでも他社のデータまで見ることまではできないようで、いわゆるブラックリストのようなものは、公には存在していないという。同じ会社で二度目の事故請求となれば、当然それなりの対応をするようだが。

▲いずれにしても自賠責が赤字になっている中で、今回のような支払い事例を見てしまうと、まじめに自賠責のお金を支払っているドライバーがバカを見ているような気がしてくる。また死亡最大3000万円、けが最大120万円の自賠責では賠償金が全額支払いきれないケースが多い(今回もそう)。であれば自賠責などもう撤廃して、民間の自動車保険に一本化し、加入を義務づける方が合理的ではないだろうか。保険会社も支払いが慎重になるだろう。もちろん保険に入らない人はより厳しく取り締まるべきで、警察にも意味のよくわからない交通取り締まりばかりでなく、こちらにも力を入れてもらいたいもの。

▲また、多大な労力をかけて警察が現場検証をしてくれるのだから、個々の事故に応じて過失責任を算定する仕組みと、それに対する賠償を明文化できないものだろうか。今回のケースであれば、この保険金支払いが何だかちょっと変だと言える第三者は、当日の現場検証をして書類を作った(それゆえ行政処分を下した)警察しかいないのだから。何百万円ものお金が動く話なのだから、民事不介入の一言で済ましていいのかとも思う。どれだけ安全に気を使って運転していても、事故は起きるときには起きてしまう。その時の備えを、個人はもちろん、制度としても見直す時が来ているのではないだろうか。

▲昨年(2010年)の無保険車(自賠責未加入車)摘発が過去10年で最多の5385件に上っているという。自賠責に入っていない人はものすごく多いようだ。また無保険車によって事故にあった被害者を救済するため、国が賠償金を加害者(無保険車運転者)に代わって立て替える制度があり、そうして支払われた立替金を加害者から回収できなかった額は458億円に上るという。この制度では自賠責とほぼ同額が被害者に支払われるが、その原資は自賠責保険料の一部とのこと。今回、もし私が無保険車であった場合、どのように支払われただろうか。被害者であることを声高に主張すれば、この制度でも支払われるのだろうか。クルマを取り巻く問題の一つがこんなところにもある。

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世界初!闘う“ハチロク”はGAZOO カラー! http://www.eurocars69.com/archives/29979 http://www.eurocars69.com/archives/29979#comments Fri, 06 Apr 2012 18:28:16 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29979 先日、スーパーGT選手権に86ブラザーズの先陣を切ってBRZがデビューしました。…

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自賠責が赤字。その原因の一つは私かもしれない:編集長コラム 水野誠志朗\’sトーク http://www.eurocars69.com/archives/29978 http://www.eurocars69.com/archives/29978#comments Fri, 06 Apr 2012 01:56:59 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29978 ▲自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責が赤字ということで、今年(2011年)4月から保険料が引き上げられていることをご存じだろうか。自賠責がどう運営されているのか、なぜ赤字なのかが今ひとつはっきりしないが、いずれにしても事故での支払いが多いということに関しては間違いないようだ。私も昨年、この保険が大量に払われた事故に遭遇したので、報告しておきたい。ちょっと、なんだかな、と思う話だ。

▲まずその事故だが、四十絡みの女性が乗る自転車に、私のクルマがかすったというもの。事故状況だが、横断歩道で止まった私のクルマの前を横切った自転車の駐輪スタンドの後端に、少し動き出した私のクルマ前部がかすった(らしい)。女性は子供を自転車後部のチャイルドシートに乗せていた。クルマ側にはなんら衝撃は無く、そのまま通り過ぎるところだったが、自転車を止めて振り向いた女性がわめいているので、クルマを止めると、当たったと言う。むろん自転車は倒れてなどいないし、クルマを見ても当たった形跡がないので、そんなことはないというと、足が痛いと言い出した。当たり屋ではないかと疑ったくらいの強い語気に、それなら警察へ行こうと近所の交番へ。この時は特に痛がる様子もなかったのだが。

▲交番で事故処理班を呼んでもらい、現場検証したが、そこで私のクルマのバンパー下にごく小さな擦り跡があり、ここに接触したのだろうということに。そうなれば致し方ないので、こちらも下手に出ることにしたのだが、そうすると今度は後ろに乗っていた子供も体が痛いといっていると言いだした。さすがにこれは普通じゃないなと思ったが、警察とも話をして、一週間様子を見て人身事故にするかどうか決めるということでその日は別れた。翌日、お詫びとして菓子折を持って事故現場すぐの自宅に行くと、受け取らない。保険屋と話すから受け取れないという。今までいくつもの事故に対応してきたが、この時点でちょっとやっかいな人であると再確認した。

▲一週間過ぎたら警察から連絡があり、案の定、先方は人身事故扱いにしたいと言っているとのこと。うちの保険会社と相談したが、そうした人だったら保険を使った方がいいでしょうとのアドバイスもあり、その後の対応は保険会社に任せた。そして私には軽微な人身事故(ただし女性と子供の二人分)ということで行政処分点4点がつけられた。おかげで累積6点になってしまい、以前のコラムで書いたように講習出席の次第となったのである。ただし、いわゆる罰金はまったく来なかった。警察としてもごくごく軽微な事故という認識だったからだろう。

▲それからは保険会社からの報告書を読んでいただけなのだが、後ろに乗っていたの子供には半年後に治療費約30万円、賠償金約50万円が支払われた。女性の方はそれからさらに半年以上(事故から1年以上)治療に通い続け、治療費約120万円、賠償金約150万円が支払われた。あとで見たら自転車にも修理代として4万円弱が支払われていた(もちろん壊れてなどいないが)。保険会社によると、本人はまだまだ通院すると言ったそうだが、さすがに保険会社もこれ以上はということで、多めの賠償金で手を打ったそうだ。クルマがかすっただけで実に350万円ものお金が支払われたのである。

▲自賠責は任意保険に優先して一人あたり120万円まで支払われる。つまり子供の分は全額自賠責から、女性の分は120万円が自賠責から支払われ、残りの150万円ほどが任意保険からの支払われた。人身事故の場合、このようにまず自賠責が使われる仕組みである。つまり120万円までは、任意保険会社の自腹は痛まない。このため割に支払いが甘いとされるが、それを超えると示談を急ぐ傾向にあるようだ。これを知ると自賠責が赤字になるのは、今回のケースのようにどんどん支払われてることも原因の一つではないかと思えてきた。

▲一般的には加害者という立場になる私だが、このケース、さすがに素直にごめんなさいという気になれない。保険会社によればこのような支払い事例は少なくないようだ。この女性に関しても、初めての事故ではなく、過去にそれなりに経験があるように思われるという。ただそうしたデータを自賠責は持ってはいないようだ。任意保険の会社では、自社が支払った人のデータベースを持っているようだが、それでも他社のデータまで見ることまではできないようで、いわゆるブラックリストのようなものは、公には存在していないという。同じ会社で二度目の事故請求となれば、当然それなりの対応をするようだが。

▲いずれにしても自賠責が赤字になっている中で、今回のような支払い事例を見てしまうと、まじめに自賠責のお金を支払っているドライバーがバカを見ているような気がしてくる。また死亡最大3000万円、けが最大120万円の自賠責では賠償金が全額支払いきれないケースが多い(今回もそう)。であれば自賠責などもう撤廃して、民間の自動車保険に一本化し、加入を義務づける方が合理的ではないだろうか。保険会社も支払いが慎重になるだろう。もちろん保険に入らない人はより厳しく取り締まるべきで、警察にも意味のよくわからない交通取り締まりばかりでなく、こちらにも力を入れてもらいたいもの。

▲また、多大な労力をかけて警察が現場検証をしてくれるのだから、個々の事故に応じて過失責任を算定する仕組みと、それに対する賠償を明文化できないものだろうか。今回のケースであれば、この保険金支払いが何だかちょっと変だと言える第三者は、当日の現場検証をして書類を作った(それゆえ行政処分を下した)警察しかいないのだから。何百万円ものお金が動く話なのだから、民事不介入の一言で済ましていいのかとも思う。どれだけ安全に気を使って運転していても、事故は起きるときには起きてしまう。その時の備えを、個人はもちろん、制度としても見直す時が来ているのではないだろうか。

▲昨年(2010年)の無保険車(自賠責未加入車)摘発が過去10年で最多の5385件に上っているという。自賠責に入っていない人はものすごく多いようだ。また無保険車によって事故にあった被害者を救済するため、国が賠償金を加害者(無保険車運転者)に代わって立て替える制度があり、そうして支払われた立替金を加害者から回収できなかった額は458億円に上るという。この制度では自賠責とほぼ同額が被害者に支払われるが、その原資は自賠責保険料の一部とのこと。今回、もし私が無保険車であった場合、どのように支払われただろうか。被害者であることを声高に主張すれば、この制度でも支払われるのだろうか。クルマを取り巻く問題の一つがこんなところにもある。

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自賠責が赤字。その原因の一つは私かもしれない:編集長コラム 水野誠志朗\’sトーク http://www.eurocars69.com/archives/29977 http://www.eurocars69.com/archives/29977#comments Wed, 04 Apr 2012 00:03:04 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29977 ▲自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責が赤字ということで、今年(2011年)4月から保険料が引き上げられていることをご存じだろうか。自賠責がどう運営されているのか、なぜ赤字なのかが今ひとつはっきりしないが、いずれにしても事故での支払いが多いということに関しては間違いないようだ。私も昨年、この保険が大量に払われた事故に遭遇したので、報告しておきたい。ちょっと、なんだかな、と思う話だ。

▲まずその事故だが、四十絡みの女性が乗る自転車に、私のクルマがかすったというもの。事故状況だが、横断歩道で止まった私のクルマの前を横切った自転車の駐輪スタンドの後端に、少し動き出した私のクルマ前部がかすった(らしい)。女性は子供を自転車後部のチャイルドシートに乗せていた。クルマ側にはなんら衝撃は無く、そのまま通り過ぎるところだったが、自転車を止めて振り向いた女性がわめいているので、クルマを止めると、当たったと言う。むろん自転車は倒れてなどいないし、クルマを見ても当たった形跡がないので、そんなことはないというと、足が痛いと言い出した。当たり屋ではないかと疑ったくらいの強い語気に、それなら警察へ行こうと近所の交番へ。この時は特に痛がる様子もなかったのだが。

▲交番で事故処理班を呼んでもらい、現場検証したが、そこで私のクルマのバンパー下にごく小さな擦り跡があり、ここに接触したのだろうということに。そうなれば致し方ないので、こちらも下手に出ることにしたのだが、そうすると今度は後ろに乗っていた子供も体が痛いといっていると言いだした。さすがにこれは普通じゃないなと思ったが、警察とも話をして、一週間様子を見て人身事故にするかどうか決めるということでその日は別れた。翌日、お詫びとして菓子折を持って事故現場すぐの自宅に行くと、受け取らない。保険屋と話すから受け取れないという。今までいくつもの事故に対応してきたが、この時点でちょっとやっかいな人であると再確認した。

▲一週間過ぎたら警察から連絡があり、案の定、先方は人身事故扱いにしたいと言っているとのこと。うちの保険会社と相談したが、そうした人だったら保険を使った方がいいでしょうとのアドバイスもあり、その後の対応は保険会社に任せた。そして私には軽微な人身事故(ただし女性と子供の二人分)ということで行政処分点4点がつけられた。おかげで累積6点になってしまい、以前のコラムで書いたように講習出席の次第となったのである。ただし、いわゆる罰金はまったく来なかった。警察としてもごくごく軽微な事故という認識だったからだろう。

▲それからは保険会社からの報告書を読んでいただけなのだが、後ろに乗っていたの子供には半年後に治療費約30万円、賠償金約50万円が支払われた。女性の方はそれからさらに半年以上(事故から1年以上)治療に通い続け、治療費約120万円、賠償金約150万円が支払われた。あとで見たら自転車にも修理代として4万円弱が支払われていた(もちろん壊れてなどいないが)。保険会社によると、本人はまだまだ通院すると言ったそうだが、さすがに保険会社もこれ以上はということで、多めの賠償金で手を打ったそうだ。クルマがかすっただけで実に350万円ものお金が支払われたのである。

▲自賠責は任意保険に優先して一人あたり120万円まで支払われる。つまり子供の分は全額自賠責から、女性の分は120万円が自賠責から支払われ、残りの150万円ほどが任意保険からの支払われた。人身事故の場合、このようにまず自賠責が使われる仕組みである。つまり120万円までは、任意保険会社の自腹は痛まない。このため割に支払いが甘いとされるが、それを超えると示談を急ぐ傾向にあるようだ。これを知ると自賠責が赤字になるのは、今回のケースのようにどんどん支払われてることも原因の一つではないかと思えてきた。

▲一般的には加害者という立場になる私だが、このケース、さすがに素直にごめんなさいという気になれない。保険会社によればこのような支払い事例は少なくないようだ。この女性に関しても、初めての事故ではなく、過去にそれなりに経験があるように思われるという。ただそうしたデータを自賠責は持ってはいないようだ。任意保険の会社では、自社が支払った人のデータベースを持っているようだが、それでも他社のデータまで見ることまではできないようで、いわゆるブラックリストのようなものは、公には存在していないという。同じ会社で二度目の事故請求となれば、当然それなりの対応をするようだが。

▲いずれにしても自賠責が赤字になっている中で、今回のような支払い事例を見てしまうと、まじめに自賠責のお金を支払っているドライバーがバカを見ているような気がしてくる。また死亡最大3000万円、けが最大120万円の自賠責では賠償金が全額支払いきれないケースが多い(今回もそう)。であれば自賠責などもう撤廃して、民間の自動車保険に一本化し、加入を義務づける方が合理的ではないだろうか。保険会社も支払いが慎重になるだろう。もちろん保険に入らない人はより厳しく取り締まるべきで、警察にも意味のよくわからない交通取り締まりばかりでなく、こちらにも力を入れてもらいたいもの。

▲また、多大な労力をかけて警察が現場検証をしてくれるのだから、個々の事故に応じて過失責任を算定する仕組みと、それに対する賠償を明文化できないものだろうか。今回のケースであれば、この保険金支払いが何だかちょっと変だと言える第三者は、当日の現場検証をして書類を作った(それゆえ行政処分を下した)警察しかいないのだから。何百万円ものお金が動く話なのだから、民事不介入の一言で済ましていいのかとも思う。どれだけ安全に気を使って運転していても、事故は起きるときには起きてしまう。その時の備えを、個人はもちろん、制度としても見直す時が来ているのではないだろうか。

▲昨年(2010年)の無保険車(自賠責未加入車)摘発が過去10年で最多の5385件に上っているという。自賠責に入っていない人はものすごく多いようだ。また無保険車によって事故にあった被害者を救済するため、国が賠償金を加害者(無保険車運転者)に代わって立て替える制度があり、そうして支払われた立替金を加害者から回収できなかった額は458億円に上るという。この制度では自賠責とほぼ同額が被害者に支払われるが、その原資は自賠責保険料の一部とのこと。今回、もし私が無保険車であった場合、どのように支払われただろうか。被害者であることを声高に主張すれば、この制度でも支払われるのだろうか。クルマを取り巻く問題の一つがこんなところにもある。

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自賠責が赤字。その原因の一つは私かもしれない:編集長コラム 水野誠志朗\’sトーク http://www.eurocars69.com/archives/29976 http://www.eurocars69.com/archives/29976#comments Mon, 02 Apr 2012 01:05:46 +0900 admin http://www.eurocars69.com//?p=29976 ▲自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責が赤字ということで、今年(2011年)4月から保険料が引き上げられていることをご存じだろうか。自賠責がどう運営されているのか、なぜ赤字なのかが今ひとつはっきりしないが、いずれにしても事故での支払いが多いということに関しては間違いないようだ。私も昨年、この保険が大量に払われた事故に遭遇したので、報告しておきたい。ちょっと、なんだかな、と思う話だ。

▲まずその事故だが、四十絡みの女性が乗る自転車に、私のクルマがかすったというもの。事故状況だが、横断歩道で止まった私のクルマの前を横切った自転車の駐輪スタンドの後端に、少し動き出した私のクルマ前部がかすった(らしい)。女性は子供を自転車後部のチャイルドシートに乗せていた。クルマ側にはなんら衝撃は無く、そのまま通り過ぎるところだったが、自転車を止めて振り向いた女性がわめいているので、クルマを止めると、当たったと言う。むろん自転車は倒れてなどいないし、クルマを見ても当たった形跡がないので、そんなことはないというと、足が痛いと言い出した。当たり屋ではないかと疑ったくらいの強い語気に、それなら警察へ行こうと近所の交番へ。この時は特に痛がる様子もなかったのだが。

▲交番で事故処理班を呼んでもらい、現場検証したが、そこで私のクルマのバンパー下にごく小さな擦り跡があり、ここに接触したのだろうということに。そうなれば致し方ないので、こちらも下手に出ることにしたのだが、そうすると今度は後ろに乗っていた子供も体が痛いといっていると言いだした。さすがにこれは普通じゃないなと思ったが、警察とも話をして、一週間様子を見て人身事故にするかどうか決めるということでその日は別れた。翌日、お詫びとして菓子折を持って事故現場すぐの自宅に行くと、受け取らない。保険屋と話すから受け取れないという。今までいくつもの事故に対応してきたが、この時点でちょっとやっかいな人であると再確認した。

▲一週間過ぎたら警察から連絡があり、案の定、先方は人身事故扱いにしたいと言っているとのこと。うちの保険会社と相談したが、そうした人だったら保険を使った方がいいでしょうとのアドバイスもあり、その後の対応は保険会社に任せた。そして私には軽微な人身事故(ただし女性と子供の二人分)ということで行政処分点4点がつけられた。おかげで累積6点になってしまい、以前のコラムで書いたように講習出席の次第となったのである。ただし、いわゆる罰金はまったく来なかった。警察としてもごくごく軽微な事故という認識だったからだろう。

▲それからは保険会社からの報告書を読んでいただけなのだが、後ろに乗っていたの子供には半年後に治療費約30万円、賠償金約50万円が支払われた。女性の方はそれからさらに半年以上(事故から1年以上)治療に通い続け、治療費約120万円、賠償金約150万円が支払われた。あとで見たら自転車にも修理代として4万円弱が支払われていた(もちろん壊れてなどいないが)。保険会社によると、本人はまだまだ通院すると言ったそうだが、さすがに保険会社もこれ以上はということで、多めの賠償金で手を打ったそうだ。クルマがかすっただけで実に350万円ものお金が支払われたのである。

▲自賠責は任意保険に優先して一人あたり120万円まで支払われる。つまり子供の分は全額自賠責から、女性の分は120万円が自賠責から支払われ、残りの150万円ほどが任意保険からの支払われた。人身事故の場合、このようにまず自賠責が使われる仕組みである。つまり120万円までは、任意保険会社の自腹は痛まない。このため割に支払いが甘いとされるが、それを超えると示談を急ぐ傾向にあるようだ。これを知ると自賠責が赤字になるのは、今回のケースのようにどんどん支払われてることも原因の一つではないかと思えてきた。

▲一般的には加害者という立場になる私だが、このケース、さすがに素直にごめんなさいという気になれない。保険会社によればこのような支払い事例は少なくないようだ。この女性に関しても、初めての事故ではなく、過去にそれなりに経験があるように思われるという。ただそうしたデータを自賠責は持ってはいないようだ。任意保険の会社では、自社が支払った人のデータベースを持っているようだが、それでも他社のデータまで見ることまではできないようで、いわゆるブラックリストのようなものは、公には存在していないという。同じ会社で二度目の事故請求となれば、当然それなりの対応をするようだが。

▲いずれにしても自賠責が赤字になっている中で、今回のような支払い事例を見てしまうと、まじめに自賠責のお金を支払っているドライバーがバカを見ているような気がしてくる。また死亡最大3000万円、けが最大120万円の自賠責では賠償金が全額支払いきれないケースが多い(今回もそう)。であれば自賠責などもう撤廃して、民間の自動車保険に一本化し、加入を義務づける方が合理的ではないだろうか。保険会社も支払いが慎重になるだろう。もちろん保険に入らない人はより厳しく取り締まるべきで、警察にも意味のよくわからない交通取り締まりばかりでなく、こちらにも力を入れてもらいたいもの。

▲また、多大な労力をかけて警察が現場検証をしてくれるのだから、個々の事故に応じて過失責任を算定する仕組みと、それに対する賠償を明文化できないものだろうか。今回のケースであれば、この保険金支払いが何だかちょっと変だと言える第三者は、当日の現場検証をして書類を作った(それゆえ行政処分を下した)警察しかいないのだから。何百万円ものお金が動く話なのだから、民事不介入の一言で済ましていいのかとも思う。どれだけ安全に気を使って運転していても、事故は起きるときには起きてしまう。その時の備えを、個人はもちろん、制度としても見直す時が来ているのではないだろうか。

▲昨年(2010年)の無保険車(自賠責未加入車)摘発が過去10年で最多の5385件に上っているという。自賠責に入っていない人はものすごく多いようだ。また無保険車によって事故にあった被害者を救済するため、国が賠償金を加害者(無保険車運転者)に代わって立て替える制度があり、そうして支払われた立替金を加害者から回収できなかった額は458億円に上るという。この制度では自賠責とほぼ同額が被害者に支払われるが、その原資は自賠責保険料の一部とのこと。今回、もし私が無保険車であった場合、どのように支払われただろうか。被害者であることを声高に主張すれば、この制度でも支払われるのだろうか。クルマを取り巻く問題の一つがこんなところにもある。

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